各人には5分間のオーディション時間があり、台本から自信のある場面を自由に選んで演じることができます。
自由に選べるとはいえ、ほとんどの人は自分の演技力と可能性をアピールするために、最も難しい場面を選びます。
しかし、そうすることで大半の役のオーディション場面が一致してしまい、かえって競争が激しくなることに気づいていません。
オーディション終了後、審査員たちは意見を口にすることも結果を直接伝えることもなく、話すとしても互いに意見交換するだけです。
待合ロビーで、木村秋岡は緊張して行ったり来たりし、時々前の閉まったドアを見上げます。
たった5分間の演技時間なのに、彼にとっては一世紀も経ったように感じられました。
ついに、スタッフがドアを開け、「シーバタフライ芸能プロダクション、鈴木爽」と呼びました。
その言葉が終わるや否や、細田銘夫の姿が中から出てきました。
木村秋岡はそれを見て、急いで迎えに行き、細田銘夫の腕をつかみ、緊張と興奮した声で「銘夫、どうだった?」と尋ねました。
細田銘夫は緊張のせいか耳元が少し赤くなっていましたが、表情は落ち着いていて、「まあまあだったと思う」と小声で答えました。
木村秋岡はそれを聞いて、少しほっとして「君がいいと思えばいいんだ。台詞は忘れなかった?」と言いました。
細田銘夫は首を振って「忘れなかった」と答えました。
一人5分間というのは実際にはとても効率的で、オーディションが終わった人はその場を去り、選ばれた場合は後日担当者から電話で知らされます。
1時間以上が経過し、待合ロビーの人は3分の1ほど減りました。多くの人が待つ間に不安になり、角で台本を見て台詞を覚えている人もいれば、目を閉じて瞑想し、役になりきろうとしている人もいました。
さらに1時間以上が過ぎ、待合ロビーの人は半分になり、最初はにぎやかだった場所も次第に静かになりました。
人は空腹時に集中力を保てるため、馬場依子は朝食を食べていませんでした。今はもう昼に近いのに、まだ名前が呼ばれず、お腹が空っぽで辛かったです。
お腹すいた。
「ローズエンターテインメント、馬場依子」
ついに、スタッフが彼女の名前を呼びました。まだ残っていた俳優たちはローズエンターテインメントという名前を聞いて、皆馬場依子を見ました。