第811章:彼だったのか

数人は鳥肌が立つのを感じ、井上雪絵でさえ思わず言った。「8歳で人を階段から突き落とすなんて、あまりにも残酷すぎるわ。」

柳澤夢子は普段学校ではかなり横柄で、傲慢な性格のため、友達もほとんどいなかった。

しかし、彼女が校外で不良少年たちと知り合いだという噂があったため、彼女に喧嘩を売る勇気のある人はほとんどおらず、見かけると皆避けて通り、鈴木由美でさえ柳澤夢子と正面から衝突したことはなかった。

だが、彼女自身がこれほど陰湿な人間だとは誰も想像していなかった。もし高橋桃の件が本当に彼女の仕業だとしたら、それはあまりにも恐ろしいことだ。

「でも彼女が認めない限り、私たちにはどうすることもできないわ」と馬場絵里菜は言った。

そもそも証拠がなく、相手も認めていないのだから、彼らも無理に柳澤夢子に罪をなすりつけることはできない。

「今は高遠晴が高橋桃を守っているから、柳澤夢子も少しは自重するだろう」と林駆は淡々と口を開いた。

藤井空はそれに同意せず言った。「それもどうかな。以前は高遠晴と高橋桃の間にはまだベールがあったけど、今は二人が付き合っているんだ。柳澤夢子が暴走してもっとひどいことをしたらどうする?」

皆はその言葉を聞いて、互いに顔を見合わせ、雰囲気は一時沈黙に包まれた。

「高遠晴はすでに直接柳澤夢子に問いただしたわ。彼女が高橋桃に何かしようとしても、おそらく躊躇するでしょう。私たちも最近は注意して見守りましょう」と馬場絵里菜は言った。

この件については、誰も油断できなかった。高校生が人を殺すなんて非現実的なことのように思えるが、実際に事件は起きていた。

あの日、もし救助員がすぐに水に飛び込んでいなかったら、高橋桃が生きていたかどうかは誰にもわからない。

皆は次々とうなずき、他に方法がないので、とりあえず警戒するしかなかった。

「私は明後日、京都で全国高校生英語スピーチコンテストに参加するため、数日間いなくなるわ」と馬場絵里菜が突然口を開いた。

数人が驚き、林駆が口を開いた。「京都に?」

馬場絵里菜はうなずいた。「私も行きたくないんだけど、校長先生の命令で、東京と学校の名誉のために頑張ってこいって」

井上雪絵もすぐに声を上げた。「絵里菜姉、もう一つの枠はあなただったの?」