028:踏み台?

小林綾乃の前に立っていた少女は鈴木慧子という。

今年二十六歳で、三年前から顔にニキビができ始め、この三年間、多くのニキビ治療製品を使ってきたが、効果がないどころか、ニキビはますます増えていった。

大小の病院もたくさん回った。

以前はメイクでニキビを隠せたが、今では濃いメイクをしても完全には隠せなくなっていた。

最近、鈴木慧子は彼氏ができたが、彼氏に素顔を見られるのが怖かった。

もし行き詰まっていなければ、鈴木慧子は路上広告なんて信じなかっただろう。

鈴木慧子は店の看板を見上げた。

美人亭。

聞いたこともないスキンケアブランドが、本当にニキビに効くのだろうか?

小林綾乃は鈴木慧子を笑顔で見つめ、優しい声で言った。「うちには蓮の露という商品があって、天然のハーブを主原料にしたニキビケア製品なんです。とても効果がありますよ。まずはサンプルを差し上げますので、三日ほど試してみてください。効果があれば、また来てくださいね」

そう言って、小林綾乃は鈴木慧子にサンプルを手渡し、続けて説明した。「朝晩必ず使ってくださいね。メイクをする時は、10分前に塗って、保護膜ができてからファンデーションなどのメイク用品を使ってください」

鈴木慧子は驚いて「これを塗った後でもメイクできるんですか?」と聞いた。

以前使っていたニキビケア製品は、使用後に何も塗れなかった。

「はい、大丈夫です」小林綾乃は軽くうなずいた。

「効果に影響はないんですか?」鈴木慧子は更に尋ねた。

「蓮の露を塗って10分経ってからメイクすれば、効果には影響ありません」

鈴木慧子はサンプルを受け取り、「じゃあ、試してみます」と言った。

「どういたしまして」

鈴木慧子が去った後、小林綾乃は拡声器を手に取り、引き続き店頭で呼び込みを続けた。

彼女は173センチ近い身長で、肌が白く美しく、笑うとえくぼができる。そこに立っているだけで、何もしなくても何も言わなくても、最高の看板になっていた。広告文句も人目を引き、伝統的な秘伝の処方という後ろ盾もあって、来店客は増える一方だった。

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その頃。

大谷家。

バン!

大谷仙依は骨董の花瓶を手に取り、激しく床に叩きつけた。

百万円相当の花瓶は、こうして粉々になってしまった。