現代社会にはありとあらゆる人がいるものだ。
詐欺事件のニュースも珍しくなくなった。
田中麗子は一度ならず見てきた。
南通りだけでも何件も起きている。
億万長者でもない限り、誰が軽々しく倒れている老人を助け起こそうとするだろうか?
田中麗子の言葉を聞いて、小林桂代は伸ばしかけた手を引っ込め、地面に倒れている老人を見ながら尋ねた。「おばあさん、大丈夫ですか?」
地面に倒れている老人を見ながら、小林桂代は突然、自分が農薬を飲んだあの夜のことを思い出した。
死に近づき、孤独で助けのない気持ちがどんなものか、彼女以上に分かる人はいないだろう。
少し躊躇した後、小林桂代は老人を助け起こすことを決意した。「おばあさん、お手伝いしますが、絶対に詐欺はしないでくださいね。」
老人にはまだ意識があり、不明瞭な声で「あ......あ......」