037:不思議な既視感

現代社会にはありとあらゆる人がいるものだ。

詐欺事件のニュースも珍しくなくなった。

田中麗子は一度ならず見てきた。

南通りだけでも何件も起きている。

億万長者でもない限り、誰が軽々しく倒れている老人を助け起こそうとするだろうか?

田中麗子の言葉を聞いて、小林桂代は伸ばしかけた手を引っ込め、地面に倒れている老人を見ながら尋ねた。「おばあさん、大丈夫ですか?」

地面に倒れている老人を見ながら、小林桂代は突然、自分が農薬を飲んだあの夜のことを思い出した。

死に近づき、孤独で助けのない気持ちがどんなものか、彼女以上に分かる人はいないだろう。

少し躊躇した後、小林桂代は老人を助け起こすことを決意した。「おばあさん、お手伝いしますが、絶対に詐欺はしないでくださいね。」

老人にはまだ意識があり、不明瞭な声で「あ......あ......」

「あ?」小林桂代は眉をひそめた。「おばあさん、何とおっしゃってるんですか?」

「あ......あ......」

「おばあさん、焦らないで、ゆっくり話してください。」

小林桂代が忠告を聞かずに老人を助け起こすのを見て、田中麗子は焦りを隠せなかった。

小林桂代は本当に純粋すぎる!

これで間違いなく詐欺に遭うわ。

小林桂代が倒れている山下おばあさんを助け起こすのを見て、大谷食堂の女将の馬場沙保里も見物に来た。馬場沙保里は腕を組んで、田中麗子の方を見ながら、声を潜めて言った。「ちっ!小林桂代は随分と大胆ね、こんな時でも助けようとするなんて!」

馬場沙保里が田中麗子のように最初から小林桂代を止めに行かなかったのは、単に面白がって見ていたかったからだ。

一旦小林桂代が詐欺に遭えば、巨額の賠償金を払わなければならなくなる。

行き詰まれば、彼女たちは儲からない店を安く譲渡するしかなくなるだろう。

そうすれば自分の妹が店を引き継げる。

そう考えると、馬場沙保里の表情はますます得意げになった。

田中麗子は眉をひそめて、「桂代お姉さんは本当に軽率すぎるわ。」

彼女が反応する間もなく、小林桂代はもう老人を助け起こしていた。

山下おばあさんの声は非常に弱々しく、「あ」という音を繰り返すばかりだった。