045:年間ランキング!

山下言野は今年二十六歳だ。

普段接する女性といえば、山下おばあさんと白川露依おばさん、そして恋多き山下莉理くらいだった。

女の子の手を触るのは初めてだった。

ドキドキ。

心臓が制御不能なほど激しく鼓動していた。

頬は真っ赤に染まり、熱くなっていた。

山下言野は必死に落ち着こうとしたが、レンチを持つ手は制御不能なほど震えていた。

このまま震え続けたら、パーキンソン病なんじゃないかと疑うほどだった。

小林綾乃を見ると、相変わらず何事もなかったかのように平然としていて、声も淡々としていた。「大丈夫よ、江湖の人間が細かいことを気にする必要なんてないわ」

実は。

小林さんの手のひらには冷や汗が滲んでいた。

ふぅ!

落ち着け落ち着け。

彼女だって大きな場面を経験してきた人間なのだから。

それを聞いて、山下言野はほっと息をついた。

よかった。

変質者と誤解されなくて済んだ。

しかし、心臓の鼓動は一向に収まる気配がなかった。

一橋景吾は芝居を見るゴリラのように、目に八つ当たりの色を浮かべながら、黒武の耳元で小声で言った。「見ただろ!」

「何を?」黒武は好奇心を抱いた。

一橋景吾は続けた。「三兄貴の顔が真っ赤だぜ!」

黒武が振り向いて見た。

見なければよかった。

この一目で。

ちっ。

社長は顔が赤いだけでなく、首まで赤くなっていて、その赤みはワイシャツの奥まで続いていた。

一橋景吾は更に噂話を続けた。「三兄貴がこんなに純情だとは思わなかったな。手を触っただけでこんなに赤くなるなんて!間違いなく童貞だぜ」

最後には下品な笑みを浮かべた。

それを聞いて、黒武は目を丸くした。

山下言野の側で三年間過ごしてきて、彼が品行方正な人間だということは知っていたが、こんなに純情だとは知らなかった。

周りの金持ちは誰もが後ろ盾を持っているのに。

華やかな夜の世界。

愛人が三人も四人も五人も?

しかし山下言野はピラミッドの頂点に立ちながら、スキャンダルひとつなかった。実に珍しい!

黒武は好奇心から尋ねた。「社長は今まで恋愛したことないんですか?」

「一度もないな」

黒武はさらに驚いた!

あの高名なKさんが。

恋愛経験すらないなんて。

誰が信じるだろうか?

小林綾乃はティッシュを取り出して手のひらの汗を拭き、椅子に座った。