大川素濃から送られてきた音声メッセージを聞いて、小林桂美はさらに怒り、カウンターの上の電卓を投げつけた。
バン!
電卓は粉々に砕け散った。
スーパーに買い物に来ようとした客も驚いて足を引っ込め、立ち去ってしまった。
青葉市の地元民として、スーパーも経営していたことから、小林桂美はこの数年で200万元ほどの貯金を持っていた。
200万元は一見多く見えるが、青葉市の中心部のマンションの一室さえ買えない額だった。
しかし200万元あれば南通りの店舗を何軒も買えたはずだ!
もしあの時200万元全額で店舗を買っていれば、今頃は億万長者になっていただろう。
この数年間、小林桂美の最大の夢は市の中心部の高級住宅地で家を買うことだった。本来なら簡単に実現できたはずの夢だった。
しかし今はその夢も砕け散ってしまった!
小林桂美は涙も出ない程悔しく、歯ぎしりをした。
彼女は苦労して大学を卒業し、十数年間青葉市の地元民として暮らしてきたのに、そんな資産を持つことはできなかった。
それなのに小林桂代は小学校も卒業していないのに、簡単にそれらを手に入れることができた!
運命は本当に不公平だ。
一方。
音声メッセージを送り終えた大川素濃は、小林桂美の今の反応を想像して、思わず大笑いした。
その様子を見て、小林桂代は好奇心から尋ねた。「素濃、何を笑ってるの?」
大川素濃は答えた。「今頃布団の中で泣いている人がいるんじゃないかと思って!」
もし自分が小林桂美なら、泣き死んでしまうだろう。
これは1億円の宝くじに当選したのに、開票日に宝くじを無くしてしまうようなものだ。何が違うというのか?
小林桂美は傲慢すぎた。少しは苦い思いをするべきだった。
「誰のこと?」小林桂代が尋ねた。
「次女のことよ」大川素濃は続けた。「あの時、私たちは彼女にも店舗を買うように勧めたのに、感謝するどころか、逆に私たちに買うなと言ったのよ。あの時の高圧的な態度は一生忘れられないわ。」
大川素濃は本当に小林桂美が嫌いだった。
自分も農村出身なのに、同じ村出身の姉を見下すなんて?
そんな根っこを忘れた人間は、金持ちになれなくて当然だ。
ここで、大川素濃は小林桂代の方を向いて言った。「お姉さん、次女が随分変わったと思わない?」