山下おばあさんの言葉は自信に満ち溢れていた。
結婚反対主義者は、相手が天上の仙女であっても、その信念は微動だにしないものだ。
白川露依も山下おばあさんの言葉があまりにも荒唐無稽だと感じ、「言野、おばあさんの言うことは気にしないで。世の中にそんな完璧な人なんているわけないでしょう?私は仙依が一番あなたに合っていると思うわ。時間があったら会って、LINEでも交換して話してみたら?」
山下おばあさんは即座に反論した。「大谷仙依はダメ!」
「お母さん、あなたが紹介する人なんて信用できないわ!」
姑と嫁が言い争う中、山下言野は頭が痛くなってきて、ソファから立ち上がり、「二階に上がるよ」と言った。
そう言うと、彼は階段を上がっていった。
山下言野は三階のジムに直行し、上着を脱ぎ、鏡に映る自分を見つめながら、なぜか安堵のため息をついた。
よかった。
腹筋とVラインは健在だった。
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午後。
山下おばあさんは贈り物を持って南通りに向かった。店の前に着くと、移転の広告が目に入り、急いで店内に入った。
姿が見えない内から声が聞こえてきた。
「桂代さん、どうして突然引っ越すことになったの?」
小林桂代は掃除をしていたが、声を聞くと即座にほうきを置き、顔を上げて笑顔で言った。「金田おばさん、いらっしゃい!」
そう言って、移転の経緯を説明した。
話を聞いた山下おばあさんは眉をひそめ、「そんな人は本当に最低ね!店を奪っても商売なんてうまくいくはずないわ」
小林桂代は軽くうなずき、何か思い出したように尋ねた。「そうそう、金田おばさん、病院の検査はどうでしたか?先生は何て?」
その話題になると、山下おばあさんは嬉しそうに小林桂代の手を取り、「行ってきたわよ!綾乃ちゃんのおかげで早めに発見できて、先生の話では後数日遅れていたらがん細胞が転移していたところだったわ」
安田振蔵の言葉を思い出し、山下おばあさんは今でも背筋が寒くなった。
人間誰しも、死を恐れないものはいない。
小林桂代は驚いた。
彼女は小林綾乃の予想に過ぎないと思っていたが、まさか本当に的中するとは。
そう言って、山下おばあさんは贈り物を取り出した。「これは特別に綾乃ちゃんのために買ってきたの。私の命を救ってくれたんだから、このくらいの物は断らないでね!怒っちゃうわよ」