054:満壺の水は音を立てず、半壺の水は音を立てる_7

正解を見て、山下文空は呆然としてしまった。

彼の母親は本当に子供のようだった。

しばらくして、山下文空は続けて言った。「露依、母さんが私の付き添いを必要としないなら、北都市に行ってくるよ。家のことは任せたよ。何かあったら、すぐに連絡してくれ。」

山下グループは最近本当に忙しく、山下おばあさんの体調に問題が出なければ、山下文空も仕事を中断することはなかっただろう。

「わかったわ。」白川露依は夫のネクタイを整えながら、「あなたは仕事に行って。家のことは私に任せて。」

そう言って、彼女はつま先立ちになって、夫の頬にキスをした。

山下文空は頷いて、「来週の火曜日に帰ってくるよ。」

「うん。」

白川露依は続けて言った。「荷物を用意してあげるわ。」

荷物を用意した後、白川露依は自ら夫を車まで見送った。

山下おばあさんもバルコニーに立って息子の出発を見送っていた。

山下文空は母親の視線を感じたかのように、上階を見上げたが、山下おばあさんはその時しゃがみ込んで、山下文空の視線を避けた。

これを見て、山下文空は苦笑いしながら言った。「この反抗的なおばあちゃん。」

しばらくして。

山下おばあさんは階下に来て、「あのマザコン息子は行ったの？」

白川露依は頷いた。

山下おばあさんはソファに座り、足を組んで、「やっと行ったわ！」

白川露依は山下おばあさんの方を向いて、「お母さん、さっきお部屋で辛い菓子を食べてたでしょう？」

「とんでもない、」山下おばあさんは真面目な顔で言った。「違うわ。どこのまともなおばあさんが部屋で辛い菓子を隠れて食べるっていうの？」

認めなければ、誰も証明できないはず。

白川露依は目を細めて、「じゃあ、お母さんの口元についている唐辛子オイルは何なんですか？」

山下おばあさんはすぐに口元を拭って、「おかしいわ！ちゃんと拭いたはずなのに。」

「ほら！」白川露依は大笑いして言った。「やっぱり辛い菓子を食べてたんですね。」

山下おばあさんはようやく自分が罠にはまったことに気付き、白川露依を見て両手を腰に当て、開き直って言った。「そうよ、辛い菓子を食べたわ！あなたに何ができるっていうの？」

今日だけでなく、明日も隠れて食べるわ。

白川露依：「...」

彼女の負けだった。