058:面談を約束して、王と王は会わず_4

鈴木赤玉の言葉には二重の意味があった。彼女はずっと徳川家の事を切り盛りし、大口豪は自分の仕事を持っていた。

大口絢が今日の成績を収められたのは、全て自制心のおかげだった。

大口絢に申し訳ないのは彼女だけではない。

徳川家全体が大口絢に借りがあるのだ。

山下おばあさんは頷いて、「絢は本当に優秀な子ね!将来きっと大成するわ!」と言った。

大口絢は謙虚に「山下おばあさん、お褒めに預かり過ぎです。この世界には、私より優秀な人がたくさんいます」と答えた。

山下おばあさんはその言葉にもっともだと感じ、「絢の言う通りね。人には上があり、天外に天ありというけれど、私は非常に凄い女の子を知っているの。まだ18歳なのに、スキンケア製品を作れるだけでなく、医術も心得ているのよ」と言った。

そう言って、山下おばあさんは鈴木澪由の方を向き、「私が話していたあの貴人よ!」と言った。

山下おばあさんから見れば、小林綾乃は大口絢よりずっと優秀だった。

大口絢の優秀さは全て表面的なものだった。

でも小林綾乃は違う。

それを聞いて、大口絢は表情を変えずに、山下おばあさんを見上げて「山下おばあさんがそこまで絶賛なさるなんて、きっとその妹さんは本当に凄いんでしょうね!機会があれば、ぜひお会いしてみたいです。山下おばあさん、彼女はどこの学校に通っているんですか?」と尋ねた。

鈴木赤玉もうなずき、笑いながら「うちの絢は友達作りが大好きで、特に自分より優秀な人とね」と言った。

諺にも友は己に勝る者を選べとある。

しかし。

そう言うものの。

大口絢より優秀な人を見つけるのは。

難しい...

結局、大口絢のような才能を持つ人は誰もがいるわけではないのだから。

山下おばあさんは「彼女はまだ大学に入っていないの。今は青葉市で高校3年生よ」と答えた。

青葉市?

高校3年生?

その言葉を聞いて、大口絢は目を伏せた。

てっきり有名大学の学生かと思っていた。

なんだ。

高校も卒業していないのか。

しばらくして、彼女は山下おばあさんを見上げ、とても誠実な笑顔で「まだ高校3年生なのにそんなに凄いなんて、将来きっと大物になりますね」と言った。