058:面談を承諾、王と王は会わず_8

たくさんのDMが届いていることに気づいた。

LY社内のスタッフからのものもあれば。

他のゲーム会社からのものもある。

ほとんどが引き抜きの誘いだった。

そりゃそうだ。

『鬼道』は今やネット上で大人気のゲームとなっている。

Wは現象級のゲームの天才となった。

彼女を引き抜けば、まさに金のなる木を手に入れるようなものだ。

小林綾乃は不要なDMを全て削除した。

その時、LY公式ロゴのアカウントからのDMが目に留まった。

相手のID名。

black。

ブラック?

小林綾乃は相手のDMを開いた。

びっしりと数十件のメッセージが並んでいた。

[Wさん、こんにちは。LY公式の担当者blackと申します。あなたのゲームを拝見しました。以前は100万USドルでの買取を考えていましたが、今は取締役が直接お会いしてお話したいとのことです。条件は自由に決めていただけます。お時間はございますでしょうか?]

[時間と場所はご指定の通りにさせていただきます。]

向こうから差し出されたお金を、小林綾乃が断る理由はなかった。

それに。

今は金が必要だった。

少し考えた。

工場を作ると決めたからには、一気に全てを整えてしまおう。

最高の最新鋭の機械を使う。

工場の面積も広くする。

大きな工場と機械だけでは足りない、従業員の数も増やさなければ。

これは巨額の投資となるだろう。

数百万程度では足りない。

土地の賃貸と工場建設だけでも相当な出費だ。

工場を拡張するなら、店舗も拡張しなければならない。

そう考えて。

彼女は返信を送った。

[いいですよ。私は青葉市にいます。]

一方。

「あああ!」

修理店内で、黒武はパソコンの画面を見つめながら興奮して叫んだ。

「おい黒、何を犬みたいに吠えてるんだ?」隣でゲームをしていた一橋景吾が呆れて振り返った。「うるさくて耳が痛いぞ!」

黒武は一橋景吾を抱きしめた。

一橋景吾は息ができないほど強く抱きしめられ、「ゴホゴホ...お前この通信簿野郎、俺は男は好きじゃないぞ!」

「違う、」黒武は興奮して言った。「誤解だ!さっき、さっき大物がログインしたんだ。」

大物?

「どの大物だ?」一橋景吾は黒武を見た。

黒武は続けた:「W。」

「マジかよ!」一橋景吾は目を見開いた。「本当か?」