たくさんのDMが届いていることに気づいた。
LY社内のスタッフからのものもあれば。
他のゲーム会社からのものもある。
ほとんどが引き抜きの誘いだった。
そりゃそうだ。
『鬼道』は今やネット上で大人気のゲームとなっている。
Wは現象級のゲームの天才となった。
彼女を引き抜けば、まさに金のなる木を手に入れるようなものだ。
小林綾乃は不要なDMを全て削除した。
その時、LY公式ロゴのアカウントからのDMが目に留まった。
相手のID名。
black。
ブラック?
小林綾乃は相手のDMを開いた。
びっしりと数十件のメッセージが並んでいた。
[Wさん、こんにちは。LY公式の担当者blackと申します。あなたのゲームを拝見しました。以前は100万USドルでの買取を考えていましたが、今は取締役が直接お会いしてお話したいとのことです。条件は自由に決めていただけます。お時間はございますでしょうか?]
[時間と場所はご指定の通りにさせていただきます。]
向こうから差し出されたお金を、小林綾乃が断る理由はなかった。
それに。
今は金が必要だった。
少し考えた。
工場を作ると決めたからには、一気に全てを整えてしまおう。
最高の最新鋭の機械を使う。
工場の面積も広くする。
大きな工場と機械だけでは足りない、従業員の数も増やさなければ。
これは巨額の投資となるだろう。
数百万程度では足りない。
土地の賃貸と工場建設だけでも相当な出費だ。
工場を拡張するなら、店舗も拡張しなければならない。
そう考えて。
彼女は返信を送った。
[いいですよ。私は青葉市にいます。]
一方。
「あああ!」
修理店内で、黒武はパソコンの画面を見つめながら興奮して叫んだ。
「おい黒、何を犬みたいに吠えてるんだ?」隣でゲームをしていた一橋景吾が呆れて振り返った。「うるさくて耳が痛いぞ!」
黒武は一橋景吾を抱きしめた。
一橋景吾は息ができないほど強く抱きしめられ、「ゴホゴホ...お前この通信簿野郎、俺は男は好きじゃないぞ!」
「違う、」黒武は興奮して言った。「誤解だ!さっき、さっき大物がログインしたんだ。」
大物?
「どの大物だ?」一橋景吾は黒武を見た。
黒武は続けた:「W。」
「マジかよ!」一橋景吾は目を見開いた。「本当か?」