彼女の声は淡々としていたが、大橋治の額に冷や汗が浮かんだ。
小林綾乃の言葉はどういう意味だろう?
まさか…。
何かに気付いたのか?
監視室内で山下言野の視線が小林綾乃と合った。
スクリーン越しであっても、少女から漂う清冽さを感じ取ることができた。
山下言野は薄い唇を微かに上げた。
それを見て、一橋景吾は信じられない様子で言った。「兄貴、小林に気付かれたんじゃないですか?」
これは恐ろしすぎる!
小林綾乃はどうやって彼らの存在に気付いたのか?
山下言野は軽く頷いて、「ああ」
非常に確信的な返事だった。
黒武も驚いて、「小林さん、すごすぎますね!」
実際に目にしなければ、十七、八歳の少女にこんな能力があるなんて誰が信じるだろうか?
まだスクリーン越しだけだ。
小林綾乃は彼らの存在に気付いただけで、誰なのかまでは分からないはずだ。