小林綾乃は一気に飛び出し、泥棒を地面に押さえつけた。
その一連の動作は見事なものだった。
「盗みを働くんじゃないよ!」
「もう逃げないでしょうね?」小林綾乃は泥棒の手を押さえたまま言った。
一見軽く押さえているように見えたが、泥棒本人だけが分かっていた、彼女の力がどれほど強いのかを。
「逃げません、逃げません」泥棒は顔を真っ青にして、長年の経験の中で初めての失敗に、「お命だけはお助けを!」
山下言野が後ろから近づき、小林綾乃を見下ろすように見て、「腕前がいいね」
それを聞いて、小林綾乃は彼を一瞥し、「あなたも素晴らしかったわ」
彼女とこれほど息の合う人は珍しかった。
山下言野が初めてだった。
山下言野は薄い唇を少し上げ、「警察を呼ぶ?」
「どう思う?」小林綾乃は眉を少し上げた。