059:正体暴露、貴人の助け_5

小林綾乃は一気に飛び出し、泥棒を地面に押さえつけた。

その一連の動作は見事なものだった。

「盗みを働くんじゃないよ!」

「もう逃げないでしょうね?」小林綾乃は泥棒の手を押さえたまま言った。

一見軽く押さえているように見えたが、泥棒本人だけが分かっていた、彼女の力がどれほど強いのかを。

「逃げません、逃げません」泥棒は顔を真っ青にして、長年の経験の中で初めての失敗に、「お命だけはお助けを!」

山下言野が後ろから近づき、小林綾乃を見下ろすように見て、「腕前がいいね」

それを聞いて、小林綾乃は彼を一瞥し、「あなたも素晴らしかったわ」

彼女とこれほど息の合う人は珍しかった。

山下言野が初めてだった。

山下言野は薄い唇を少し上げ、「警察を呼ぶ?」

「どう思う?」小林綾乃は眉を少し上げた。