山本世月はマニキュアを塗りながら、娘の方を見上げて言った。「デートでもないのに、そんなにお洒落する必要ある?」
渡辺麗希は呆れ気味に言った。「ママ、普通の親は子供の早恋を心配するのに、ママは逆に私に早く恋愛してほしいみたいね」
山本世月の心理は分からなかった。
幸い、麗希は恋愛に興味がなかった。
もしそうでなければ、今頃子供がいたかもしれない。
そう言って、渡辺麗希は続けた。「ママ、私はもうすぐ高校三年生よ。人生で一番大切な時期なのに!恋愛で大学に行けなくなったらどうするの?」
「行けなければそれまでよ」山本世月は無関心そうに言った。「どうせうちはお金があるんだから」
そのお金があれば、渡辺麗希は何世代も怠けて暮らせるほどだった。
山本世月は開放的な親だった。
子供を縛り付けるような性格が嫌いだった。