山本世月はマニキュアを塗りながら、娘の方を見上げて言った。「デートでもないのに、そんなにお洒落する必要ある?」
渡辺麗希は呆れ気味に言った。「ママ、普通の親は子供の早恋を心配するのに、ママは逆に私に早く恋愛してほしいみたいね」
山本世月の心理は分からなかった。
幸い、麗希は恋愛に興味がなかった。
もしそうでなければ、今頃子供がいたかもしれない。
そう言って、渡辺麗希は続けた。「ママ、私はもうすぐ高校三年生よ。人生で一番大切な時期なのに!恋愛で大学に行けなくなったらどうするの?」
「行けなければそれまでよ」山本世月は無関心そうに言った。「どうせうちはお金があるんだから」
そのお金があれば、渡辺麗希は何世代も怠けて暮らせるほどだった。
山本世月は開放的な親だった。
子供を縛り付けるような性格が嫌いだった。
渡辺麗希:「...」
こんな母親を持つと、本当に心配の種が絶えない。
しばらくして、渡辺麗希は白いワンピースに着替えて戻ってきた。「ママ、このドレスどう?」
山本世月は塗りたてのマニキュアを吹きながら、無関心そうに言った。「赤いのの方が似合ってたわ。なんで赤いのを着ないの?」
「私は白いのの方が良いと思うわ」
それを聞いて、山本世月は目を転がした。「白いのが良いと思うなら、なんで私に聞くのよ?」
余計なことをする。
渡辺麗希は笑って言った。「じゃあ、この白いのにするわ」
実は渡辺麗希は赤いドレスが似合わないと思ったわけではなかった。
ただ、赤いドレスは有名な高級ブランドで、五桁の値段がするものだった。
小林綾乃は銀杏通りの普通のマンションに住んでいる。
高価すぎるドレスを着て、小林綾乃にプレッシャーを与えたくなかった。
さらに小林綾乃が劣等感を感じることも心配だった。
渡辺麗希は本当に小林綾乃と友達になりたかった。
だから、あらゆる面で配慮していた。小林綾乃に距離感を感じさせたくなかった。
山本世月は続けて聞いた。「夜は帰ってきて食事する?」
「状況次第ね」渡辺麗希は答えた。
小林綾乃との約束の時間が近づいてきたので、渡辺麗希は首からネックレスを外してテーブルに置いた。「ママ、行ってくるわ」
山本世月は眉をひそめた。「そんなに素敵なネックレス、なんで外すの?」
「似合わないと思うから」