059:正体露見、貴人の助け_7

「ちょっと重いわね。二人で半分ずつ持ちましょうか?」と渡辺麗希が提案した。

果物は執事が渡辺麗希のために用意したものだった。

大きなスイカ1つ、ドリアン1つ、それにライチ1箱。

執事は渡辺麗希を安住マンションの入り口まで送ってきた。そんなに長い距離を運んでいないのに、彼女はすでにへとへとだった。

「大丈夫よ」小林綾乃は渡辺麗希から果物を受け取った。

約10キロの重さのものが、彼女の手の中では何の重みもないかのようだった。

軽々と。

階段を上るときも一言も漏らさなかった。

渡辺麗希は驚きを隠せなかった。

「綾乃ちゃん、すごいわね」

「まあまあかな」小林綾乃は少し眉を上げた。

すぐに二人は3階に着いた。

小林綾乃が鍵を取り出そうとした時、向かいの秋田家のドアが開き、秋山春樹が出てきて自ら小林綾乃に声をかけた。「小林さん、出かけるの?」

再び小林綾乃を見て、秋山春樹は何とも言えない気持ちになった。

彼は小林綾乃を勉強のできない子だと思っていた。

しかし予想外にも...

小林綾乃は青葉高校の編入試験に合格しただけでなく、5科目で1位を取った。

それも。

秋山春樹はクラスの委員長なのに、一度も5科目同時に1位を取ったことがなかった。

彼女はどうやってそれを成し遂げたのだろう?

昨日この知らせを聞いたとき、彼は信じられなかった。

学校の公式アカウントがこの喜ばしいニュースを発表するまで。

やっとこの事実を確信できた。

その言葉を聞いて、小林綾乃は少し目を向けて、「友達を家に招いたの」と言った。

秋山春樹は頷いて、「ああ」と答えた。

言い終わると、秋山春樹は何か思い出したかのように続けた:「青葉高校に合格おめでとう。これからは同じ学校の仲間だね。一緒に頑張ろう!」

この言葉を言い終えて、秋山春樹は小林綾乃の表情を期待して待った。

一緒に頑張ろうと言ったら、きっと彼女は興奮するだろう?

誰だって憧れの人と一緒に頑張りたいものでしょう?

しかし小林綾乃の顔には秋山春樹が期待したような表情は現れず、ただ淡々と「ありがとう」と言った。

言い終わると、彼女はドアを開け、渡辺麗希に「入って。靴は履き替えなくていいわ」と言った。

渡辺麗希は中に入った。

パタン。

次の瞬間、ドアが閉められた。