「ちょっと重いわね。二人で半分ずつ持ちましょうか?」と渡辺麗希が提案した。
果物は執事が渡辺麗希のために用意したものだった。
大きなスイカ1つ、ドリアン1つ、それにライチ1箱。
執事は渡辺麗希を安住マンションの入り口まで送ってきた。そんなに長い距離を運んでいないのに、彼女はすでにへとへとだった。
「大丈夫よ」小林綾乃は渡辺麗希から果物を受け取った。
約10キロの重さのものが、彼女の手の中では何の重みもないかのようだった。
軽々と。
階段を上るときも一言も漏らさなかった。
渡辺麗希は驚きを隠せなかった。
「綾乃ちゃん、すごいわね」
「まあまあかな」小林綾乃は少し眉を上げた。
すぐに二人は3階に着いた。
小林綾乃が鍵を取り出そうとした時、向かいの秋田家のドアが開き、秋山春樹が出てきて自ら小林綾乃に声をかけた。「小林さん、出かけるの?」
再び小林綾乃を見て、秋山春樹は何とも言えない気持ちになった。
彼は小林綾乃を勉強のできない子だと思っていた。
しかし予想外にも...
小林綾乃は青葉高校の編入試験に合格しただけでなく、5科目で1位を取った。
それも。
秋山春樹はクラスの委員長なのに、一度も5科目同時に1位を取ったことがなかった。
彼女はどうやってそれを成し遂げたのだろう?
昨日この知らせを聞いたとき、彼は信じられなかった。
学校の公式アカウントがこの喜ばしいニュースを発表するまで。
やっとこの事実を確信できた。
その言葉を聞いて、小林綾乃は少し目を向けて、「友達を家に招いたの」と言った。
秋山春樹は頷いて、「ああ」と答えた。
言い終わると、秋山春樹は何か思い出したかのように続けた:「青葉高校に合格おめでとう。これからは同じ学校の仲間だね。一緒に頑張ろう!」
この言葉を言い終えて、秋山春樹は小林綾乃の表情を期待して待った。
一緒に頑張ろうと言ったら、きっと彼女は興奮するだろう?
誰だって憧れの人と一緒に頑張りたいものでしょう?
しかし小林綾乃の顔には秋山春樹が期待したような表情は現れず、ただ淡々と「ありがとう」と言った。
言い終わると、彼女はドアを開け、渡辺麗希に「入って。靴は履き替えなくていいわ」と言った。
渡辺麗希は中に入った。
パタン。
次の瞬間、ドアが閉められた。