「ちょっと重いわね。二人で半分ずつ持ちましょうか?」と渡辺麗希が提案した。
果物は執事が渡辺麗希のために用意したものだった。
大きなスイカ1つ、ドリアン1つ、それにライチ1箱。
執事は渡辺麗希を安住マンションの入り口まで送ってきた。そんなに長い距離を運んでいないのに、彼女はすでにへとへとだった。
「大丈夫よ」小林綾乃は渡辺麗希から果物を受け取った。
約10キロの重さのものが、彼女の手の中では何の重みもないかのようだった。
軽々と。
階段を上るときも一言も漏らさなかった。
渡辺麗希は驚きを隠せなかった。
「綾乃ちゃん、すごいわね」
「まあまあかな」小林綾乃は少し眉を上げた。
すぐに二人は3階に着いた。
小林綾乃が鍵を取り出そうとした時、向かいの秋田家のドアが開き、秋山春樹が出てきて自ら小林綾乃に声をかけた。「小林さん、出かけるの?」