山下言野には大物らしい態度は微塵もなかった。
毎日、修理屋で車を修理するか、修理屋で寝るかのどちらかだった。
何もすることがない。
ただ無為に日々を過ごすだけ。
元々、遠藤お爺さんは山下言野を引き取り直そうと考えていた。
今では…
この腐った泥を足の下に踏みつけたいだけだった。
こんな人間が生きているだけで、彼にとっては侮辱そのものだった。
遠藤お爺さんは目を細めて、「あいつにそんな知恵があるはずがない」と言った。
三つ子の魂百までと言うように。
山下言野は幼くして山下家の者に引き取られたが、遠藤お爺さんも七歳までは彼の成長を見守っていた。
山下言野は幼い頃から平凡で、特別なところは何一つなかった。
三歳の時でさえ、やっと百まで数えられる程度だった。
遠藤越海は双眼鏡を下ろして、「お父さん、もし山下言野がKさんでないとすれば、大橋克さんが見た人は誰なんでしょうか?」と尋ねた。
遠藤お爺さんは黙っていた。
大橋克さんとは十年近く取引があり、彼と遠藤お爺さんは取引相手であり、友人でもあった。
道理で言えば…
大橋克さんが彼らを騙すはずがない。
それに大橋克さんはまだ五十歳前後で、目が曇る年齢でもない。
遠藤お爺さんは一時、様々な思いが頭を巡った。
しばらくして、何か思い出したように、「中村の方はどうだ?」と尋ねた。
中村は山下言野の出国記録を調べる担当だった。
もしその日、大橋克が見た人物が本当に山下言野だったなら、その日、山下言野は国内にいなかったはずだ。
遠藤越海は首を振って、「まだです」と答えた。
話というのは不思議なもので。
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、オフィスの外からノックの音が聞こえた。
「どうぞ」と遠藤越海が言った。
次の瞬間、山下言野の出入国記録の調査を担当していた中村が外から入ってきた。
中村は恭しく言った:「お館様、若様。調べましたが、先月、山下言野の出入国記録はありませんでした。」
遠藤越海は振り返って中村を見た。「確かか?」
中村は頷き、手元の書類を遠藤越海に渡した。「これが出入国記録です。ご確認ください。」
遠藤越海は中村から書類を受け取った。
書類には印鑑が押されていた。
しかし山下言野の出入国記録は0だった。