渡辺麗希は友達の輪に投稿した写真が加工なしのオリジナルだと強調しているようだったが。
山本世月は信じなかった。
母親として、自分の娘のことをよく分かっていた。
渡辺麗希は頑固で、少し融通が利かない。一度決めたことは、十頭の牛でも引き戻せないほどだ。
だから、彼女は小林綾乃のために隠しているのだ。
渡辺麗希は母親にどう説明すればいいか分からず、スマホから写真を探し出して母親に渡した。「ママ、本当にオリジナルかどうか見てください。」
山本世月は笑いながら言った。「本当のオリジナルはとっくに削除したんでしょう?」
娘のことを知っている彼女には、渡辺麗希がそんなことをするのは間違いないと思えた。
渡辺麗希:「...」
しばらくして、渡辺麗希は母親を見つめて言った。「ママ、私そんなにバカに見えますか?友達が自分だけ加工するのを見過ごして、その写真を友達の輪に投稿するなんて?」
彼女はバカじゃない。
善悪の区別くらいつく。
それに、一緒に写真を撮ることも、友達の輪に投稿することも、全部自分から言い出したことで、小林綾乃には何の関係もない。
山本世月は娘を上から下まで見渡して、さらに尋ねた。「今日はこのワンピースを着て出かけたの?」
「はい。」
山本世月は目を細めた。
このワンピースはごく普通で、目立つロゴもなく、生地も普通だった。
しばらくして、山本世月はさらに尋ねた。「エルメスのバッグを持って行ったんじゃないの?」
渡辺麗希は白いバッグを持っていた。
価値は百万円ほど。
普段どこへ行くにもそれを持ち歩いていた。
きっとそのバッグを持っていたから、小林綾乃に気付かれたのだろう。
「違います」渡辺麗希は諦めたように言った。「ママ、綾乃のことをそんなに悪く考えないでください。」
山本世月は肩をすくめた。「まあいいわ。たとえ彼女があなたの本当の身分を知らなくても、自分だけ写真を加工するという一点だけでも、いい人じゃないってことは分かるわ。」
渡辺麗希:「...」はいはい!
一周回って、また元の問題に戻ってきた。
もういいや。
説明するのも疲れた。
渡辺麗希は続けて言った。「そうそう、ママ、お金をください。」
お金?
山本世月は即座に警戒心を抱いた。