069:独断専行_4

安住マンションは住み心地は悪くないけれど。

やはり立ち退き補償で得た住宅だから、緑化や管理サービスが行き届いていない。

今はお金があるから、当然もっと環境の良いところに引っ越したいと思っている。

その話を聞いて、小林桂代は大川素濃の方を見て、笑いながら言った。「綾乃も家を買うって言ってるわ。素濃さん、一緒に住んで隣同士になりませんか?」

「もちろんいいわよ。綾乃がどこがいいって言えば、そこにするわ。」

「帝苑マンションの大きな部屋が欲しいわ。」と小林綾乃が言った。

帝苑マンションは青葉市で最も豪華な繁華街にあり、市内でも最高級のマンションの一つだ。

もちろん。

家賃も安くない。

現在、帝苑マンションの価格は1平方メートルあたり80万円にまで上がっている。

80万円はそれほど高くないかもしれないが、青葉市はただの地方都市で、平均月収は6万円程度。80万円という価格は一般人にとっては天文学的な数字だ!

それを聞いて、大川素濃は少し考えてから、「帝苑マンションの部屋は確かにとてもいいわね。広くて快適だし。でも少し高いわ。頭金だけでも5、6千万円必要だって聞いたわ!」

今は金銭的に困っているわけではないが、手元の資金は2千万円程度しかない...

帝苑マンションを買うのは少し無理があるかもしれない。

「おばさん、もう少し待ちましょう。今はそんなに急いでないし。」と小林綾乃が言った。

美人亭の現在の営業状況を見ると、大川素濃はすぐに帝苑マンションの大きな部屋を買えるようになるはずだ。

「そうね。」大川素濃は頷いて、「もう少し待ってみましょう。」

そう言って、大川素濃は何か思い出したように、「そういえば綾乃、前に弟に勧めた物件、今は1平方メートルあたり3万円も値上がりしたのよ!」

「本当?」小林桂代は興味深そうに尋ねた。

「もちろん本当よ。弟は85万円で買ったのに、今はもう100万円以上になってるわ。しかも、あの地域では新しい規定ができて、夫婦両方が3年以上の社会保険に加入していないと買えないの。そうじゃなかったら、私と強輝も投資用に1戸買おうと思ってたのに!」

小林強輝は社会保険に加入しているが、大川素濃は以前ずっと実家で子育てをしていたため、長年働いておらず、当然社会保険にも加入していない。