「皇妃物語」と古川月が答えた。
馬場沙保里は頷いて、「その名前はいいわね」と言った。
話している最中、大型トラックが店の前に停まり、運転手が窓を下ろして「中村社長、荷物が届きました!」と声をかけた。
古川月は笑いながら「こんなに早く?」と言った。
運転手は「急いでほしいとおっしゃったでしょう?食事も取らずに急いできたんです」と答えた。
「明日オープンだから、急がないわけにはいかないでしょう?」と言いながら、古川月は店内を振り返って「中村さん、早く荷物の搬入を手伝って」と呼びかけた。
「はいはい」と中村忠正が中から走り出てきた。
——
一方。
白川露依は山下言野からもらった最高級の翡翠のブレスレットをつけてお茶会に参加した。
ブレスレットに合わせて、特別に水色のチャイナドレスを選び、白いショールを羽織った姿は、まるで民国時代の映画から抜け出てきた軍閥の奥様のようだった。
案の定。
白川露依がホールに入るや否や、大勢の人々の注目を集めた。
「山下さん、そのブレスレット素敵ですね」
「これはコレクターズアイテムですよね?」
「山下さんのお肌の白さが際立ちますね」
白川露依は称賛の声の中で次第に我を忘れていった。
「最高級の翡翠で、普通の翡翠の10倍以上の価値があります。しかも私の知る限り、この翡翠の採掘場はもう閉鎖されています」希少価値の高いもの、特に翡翠のような元々貴重なものは、採掘場が閉鎖されると、白川露依の腕にあるこのブレスレットは、世界で唯一のものかもしれない。
話をしたのは小島さんだった。
小島家は代々翡翠ビジネスに携わっており、彼女の言葉は非常に説得力があった。
それを聞いて、白川露依は笑いながら「じゃあ、これはいくらくらいだと思う?」と尋ねた。
小島さんは白川露依の手首に視線を落とし、「最低でも10桁からですね」と答えた。
これは決して誇張ではない。
最高級の翡翠で、しかも閉鎖された採掘場からのものだから。
ホールにいた金持ちの奥様たちでさえ、この数字を聞いて息を飲んだ。
10桁というのは、単なる10桁以上を意味するだけではない。
「山下さん、旦那様からのプレゼントですか?」