彼女は早く小林綾乃を家に招待したいと思った。
失態を見せるわけにはいかない。
「はい」執事は頷いた。
その時、外から足音が聞こえ、続いて山本世月の声が、「麗希、早く出てきて、誰が来たか見てみなさい」
それを聞いて山本世月は眉をひそめた。
誰だろう?
渡辺麗希が椅子から立ち上がったところで、山本世月が外から入ってきた。
彼女の後ろには十七、八歳の爽やかな少年が続いていた。
パーカーを着て、マスクをしていたが、渡辺麗希は一目で彼だと分かった。「松本楠敬?」
松本楠敬は渡辺家が突然裕福になった後、渡辺麗希が名門校で知り合った親友だった。
それを聞いて、松本楠敬はマスクを外した。「渡辺お嬢様が覚えていてくれるとは」
「何言ってるの?」渡辺麗希は松本楠敬の方に歩いて行って軽く殴った。「どうして突然青葉市に来たの?」