074:まさかこんなに使えるなんて、白川露依は後悔!_3

彼女は本当にここが好きだった。

渡辺麗希は赤いワンピースを手に取り、「店長さん、これ試着してもいいですか?」

ここの商品は全て卸値で、店長の態度は専門店ほど良くなく、淡々と「いいよ、汚さないでね」と言った。

「ありがとうございます」

渡辺麗希はバッグを小林綾乃に渡し、試着室に入った。

松本楠敬は端の方で電話を受けていた。

小林綾乃は外で渡辺麗希を待っていた。

その時、もちこが彼女の方に走ってきて、そのまま彼女の足にしがみついた。

「ママ!」

ママ?

小林綾乃は呆然とした。

「お嬢ちゃん、人違いよ」小林綾乃はしゃがんで、もちこの頭を撫でた。

もちこは二つのおさげ髪をしていて、とても可愛らしく、白くて柔らかそうな肌をしていた。大きな瞬きする目は話しかけてくるようで、思わずキスしたくなるほど愛らしかった。

「間違ってないよ」もちこは小林綾乃をじっと見つめ、真剣な表情で言った。「パパが言ってたの。ママは世界で一番綺麗な女の人だって。だから、あなたが私のママに違いないの!」

小林綾乃は笑いながら「おばさんは確かに綺麗かもしれないけど、本当にあなたのママじゃないのよ」と言った。

「違う違う、ママだよ!」もちこは小林綾乃の足にしがみついたまま離そうとせず、話しているうちに泣き出してしまった。「ママ、もう萌を置いていかないで。これからは萌、とっても良い子になるから...」

もちこの言葉を聞いて、小林綾乃は突然胸が痛くなった。

この子は小さい頃に母親を亡くしたのだろう。

そうでなければ。

父親が「ママは世界で一番綺麗な女の人」なんて言うはずがない。

そして彼女も「ママを置いていかないで」なんて言わないはず...

どういうわけか。

小林綾乃は突然、前世の自分を思い出した。

しばらくして、小林綾乃はもちこを抱き上げ、笑顔で「萌って言うの?」と尋ねた。

もちこは目を擦りながら頷き、不満げに「ママ、私は渡辺萌だよ。萌の名前も忘れちゃったの?」と言った。

小林綾乃は周りを見回して子供を探している人がいないか確認し、「萌、いい子だから泣かないでね」と言った。

もちこは頷いて「うん、言うこと聞くよ。泣かないよ。私はママの一番いい子で一番可愛い子だもん」と言った。

もともと可愛らしい子供だったが、この時はさらに愛らしく見えた。