077:恐ろしい実力、身分を明かす_5

小林綾乃は力を入れすぎたようだ。

彼は今は勉強に集中したいだけで、どうしてこんなことに気を取られるだろうか?

そう言って、城井沙織は斎藤明露の方を向いて、「それと、明露もこれは秘密よ」と言った。

斎藤明露は頷いて、「分かった分かった」と答えた。

秋山春樹は続けて言った:「じゃあ、話してて。私は先に帰るよ」

秋山春樹の家は3階にある。

夕方のラッシュ時はエレベーターが混んでいるので、彼は階段を使うことにした。

小林綾乃の新しい借り部屋は2階にある。

小林綾乃の部屋の前を通りかかると、ドアが開いていて、入り口に黒猫が座っているのに気付いた。

ドアの外から、小林綾乃のシルエットがかすかに見えた。

秋山春樹はちらっと見ただけですぐに視線を外した。小林綾乃はわざとドアを開けていたのだろうか?

彼女は自分に見せたかったのだ。

そう思うと、秋山春樹は口元に微笑みを浮かべた。

小林綾乃は魚肉ソーセージを持って部屋から出てきて、皮をむいて、かがんで黒猫の前に差し出した。「ちびちゃん、家に賞味期限切れのソーセージがあるんだけど、食べる?」

明らかに。

小林綾乃のこの言葉は余計だった。

ソーセージの匂いを嗅ぐと、黒猫は両前足でソーセージをしっかりと掴み、ニャーニャー鳴きながら、離そうとしなかったからだ。

かわいそうな子だ。

きっと何日も空腹だったのだろう?

小林綾乃は猫を見つめて、「本当にかわいそうな子ね」と言った。

黒猫にソーセージを渡すと、小林綾乃は部屋に戻って仕事を続けた。

ドアはまだ開いたままだった。

黒猫は入り口でソーセージを食べ、食べ終わると、おそるおそる部屋の中に入っていった。

数歩進んで、小林綾乃が追い出さないのを確認すると、黒猫はさらに大胆になり、彼女の足元まで来て座り込み、眠り始めた。

小林綾乃が仕事を終えてパソコンを閉じると、自分の足元に黒猫が寝そべっているのに気付いた。

小林綾乃は少し顔を下げて、「かわいそうな子、どうして入ってきたの?私、猫は好きじゃないのよ!飼うなんて考えないでね」

黒猫は小林綾乃を見上げて一声、「ニャー」と鳴いた。

「名前は何ていうの?」と小林綾乃は続けた。

「ニャーニャーニャー」黒猫は小林綾乃の言葉が分かったかのように鳴いた。