「ちょうど通りかかったところだ」と言いながら、山下言野は運転席から一冊の本を取り出し、「これはあなたのですか?」
緑色の表紙の本だった。
少し古びていた。
名前は書かれていなかった。
「どうしてあなたが持っているの?」小林綾乃は緑色の本を受け取りながら、驚いた様子で尋ねた。
彼女はこの本を数日間探していた。
まさか山下言野が持っているとは。
山下言野は淡々とした口調で、「この前送った時に、車に置き忘れたんだ。今気づいたところだ」
「ありがとう」
「たまたま通りかかっただけだよ」
小林綾乃は本を持ちながら、「今度タピオカミルクティーをおごります」
「何度目の『今度』かな?」山下言野は眉を少し上げた。
もし彼の記憶が間違っていなければ。
これで小さな子が彼にタピオカミルクティーをおごると言うのは三回目だ。
でも小さな子から積極的な誘いは一度もなかった。
ちっ。
女の口から出る言葉は信用できないというが、小さな子も例外ではないようだ。
小林綾乃は軽く笑って、「今度こそ必ずおごります」
「いいよ」山下言野は軽く頷いて、「用事があるから、先に行くよ」
「気をつけて運転してください」
「ああ」
すぐに、黒いフォルクスワーゲンは夜の闇に消えていった。
車のスピードは来た時ほど速くなかった。
時速七十キロ程度を保っていた。
すぐに、修理工場に着いた。
一橋景吾はちょうど今日最後の車の修理を終えたところだった。
「三郎さん、やっと戻ってきましたね!」
この修理工場は確かに山下言野が経営しているのに、修理工になってしまったのは彼だった。
西京の人々がこれを見たら、彼が落ちぶれて車の修理で生計を立てているのだと思うだろう。
「どうした?」山下言野は彼を一瞥した。
一橋景吾は手を振りながら、「さっき黒武が来たんですが、もう帰りました。三郎さん、どこに行ってたんですか?」
「小さな子に本を届けてきた」
「まさか!」これを聞いて、一橋景吾は目を見開いた、「あの緑の表紙の本は本当に小林さんのものだったんですか?」
「彼女のものだ」
一橋景吾は喉を鳴らし、しばらくして山下言野を見つめて、「三郎さん、小林さんって一体何者なんでしょうか?」
ゲームを作れる!
古代エジプト語も読める。