「ちょうど通りかかったところだ」と言いながら、山下言野は運転席から一冊の本を取り出し、「これはあなたのですか?」
緑色の表紙の本だった。
少し古びていた。
名前は書かれていなかった。
「どうしてあなたが持っているの?」小林綾乃は緑色の本を受け取りながら、驚いた様子で尋ねた。
彼女はこの本を数日間探していた。
まさか山下言野が持っているとは。
山下言野は淡々とした口調で、「この前送った時に、車に置き忘れたんだ。今気づいたところだ」
「ありがとう」
「たまたま通りかかっただけだよ」
小林綾乃は本を持ちながら、「今度タピオカミルクティーをおごります」
「何度目の『今度』かな?」山下言野は眉を少し上げた。
もし彼の記憶が間違っていなければ。
これで小さな子が彼にタピオカミルクティーをおごると言うのは三回目だ。