実は断るというわけでもなく、ジョギング中はスマートフォンを持っていると面倒なので、小林綾乃は家に置いてきただけだった。
今は本当にスマートフォンを持っていない。
木下想知は身長185センチで、かなりイケメンだった。学校では彼が連絡先を聞けない女子はいないし、口説けない女子もいなかった。まさか今日、小林綾乃にここで壁にぶつかるとは思わなかった。彼は笑いながら言った。「君の名前だけでも教えてくれない?また会えるかもしれないし、僕はよくここでバスケをするから。」
「小林綾乃よ。」
「ありがとう。」小林綾乃の名前を聞いた木下想知は、さっさと立ち去った。
ここまで見て、秋山春樹は少し驚いた。彼は小林綾乃が自分の目の前で木下想知と連絡先を交換すると思っていた。
しかし予想外にも...
小林綾乃は断ったのだ!
小林綾乃はどういうつもりだろう?
もしかして自分に誤解されることを恐れて?だから通りすがりの人に自分の目の前で連絡先を聞かせて、自分の魅力を証明しようとしているのか。
小林綾乃は間接的に彼に伝えようとしているのだ。彼女は引く手数多で、もし彼が積極的に追わなければ、他の人を受け入れることになるということを。
言わざるを得ない。
小林綾乃のこの考えは純粋すぎる。
彼は頭の足りない高校生ではないし、一人の少女のために自分の将来を台無しにするつもりもない。
最初から最後まで。
秋山春樹は自分が何を望んでいるのかよく分かっていた。
しばらくして、秋山春樹は小林綾乃の側に歩み寄り、そのとき初めて彼女の肩に乗った猫に気付いた。「綾乃、いつから猫を飼い始めたの?」
確か小林綾乃は動物が苦手だと言っていたはずだが?
特に毛の抜ける小動物が。
「母が飼っているの。」小林綾乃は淡々と答えた。
小林桂代が飼っている?
そんなはずがない!
もし本当に小林桂代が飼っているのなら、なぜこの猫は小林綾乃とこんなに仲が良いのか?
秋山春樹は目を細めた。
もしかして小林綾乃は自分のために猫を飼い始めたのではないか?
以前、小林綾乃の前で猫が大好きだけど、藤原巧が飼うことを許してくれないと言ったことがあったから。
だから。
小林綾乃は彼の好みに合わせようとし、また彼の願いを叶えようとしているのだ。