079:徳川家の継承者_2

外から足音が聞こえた。

鈴木赤玉が顔を上げると、医療バッグを背負った小口貞那の姿が目に入った。

小口貞那は相変わらず優しい様子で、「赤玉、具合が悪いと聞いたけど、今は少しましになった?」

「まあまあです。最近少し疲れているだけで。」

小口貞那は鈴木赤玉の前に歩み寄り、脈を取った。

しばらくして、小口貞那は鈴木赤玉の手首を離し、声を低めて言った。「赤玉、これは心配し過ぎよ!」

鈴木赤玉はハッとした!

小口貞那は本当に凄い、こんなことまで診断できるなんて。

小口貞那は続けて言った。「子供や、船は橋に着けば自然と真っ直ぐになるものよ。時には考えすぎない方がいいわ。」

徳川家はここにある。

翼は生えない。

飛び立つこともできない。

「今回は違うんです。」

「どこが違うの?」小口貞那は尋ねた。

鈴木赤玉は閉じられた書斎の扉を見て、続けた。「胸が痛いんです。断続的に痛むんです。」

それを聞いて、小口貞那は眉をしかめた。

「胸が痛い?」

「はい。」鈴木赤玉は続けた。「まるで大切なものを失いそうな感じがするんです。」

小口貞那は続けて言った。「もう一度脈を診させて。」

「はい。」鈴木赤玉は小口貞那に手を差し出した。

今回、小口貞那はすぐには病因を診断せず、しばらく考え込んでから言った。「赤玉、お薬を処方するわ。この処方箋通りに数日服用すれば、症状は良くなるはずよ。」

「吉田おばさん、ご面倒をおかけします。」

「まあ、この子ったら、私に遠慮することないのよ。」小口貞那は笑いながら言った。

そう言うと、小口貞那は医療バッグから処方箋用紙を取り出し、処方箋を書き始めた。

数分後、彼女は筆を置き、処方箋を折りたたんで鈴木赤玉に渡し、注意を促した。「赤玉、必ず用量通りに服用してね。決して過剰摂取してはいけないわ。それに、一日の服用時間も守らなければならないわ。」

「はい。」鈴木赤玉は処方箋を受け取り、頷いた。

小口貞那は医療バッグを片付けながら、「他に用事がなければ、私はこれで失礼するわ。」

「お送りします。」鈴木赤玉は立ち上がり、小口貞那を門まで見送った。

小口貞那はすぐには徳川家を離れず、徳川勝の中庭へと向かった。

徳川勝は最近、回復具合が良好だった。

唐装を着て、今は中庭で太極拳を練習しており、とても元気そうに見えた。