079:徳川家の継承者

その時、鈴木赤玉はあのガキが死に切れていなかったどころか、青葉市にいることなど思いもよらなかった!

もし間違いなければ、鈴木澪由は今回東区での採血のため、青葉市を通って山下おばあさんと会うはずだ。

その瞬間。

赤玉の心は乱れた。

もしも...

もしも彼女たちが再会したらどうしよう?

もし澪由があのガキと再会したら、自分の立場はどうなるの?

いけない。

そんなことは絶対に起こさせない。

赤玉は必死に冷静さを取り戻そうと深呼吸をし、助手を見つめた。「確かなの?」

助手は唇を噛んで、「今は鑑定書だけが足りないんです」

鑑定書がない以上、赤玉の質問に直接答えることはできなかった。

赤玉は目を細めて、「帰ったら、すぐに彼らの資料を送ってよこしなさい」

「はい」

空港から徳川家に戻る道中、赤玉の気分は最悪だった。

落ち着かない。

あのガキの命がなぜこんなに強いのか理解できなかった。

どうやって徳川家に戻ったのかさえ分からないほどだった。

車から降りるなり、赤玉は書斎へと直行した。

大口絢は母の慌ただしい後ろ姿を見て眉をひそめた。「お母さん、どうしたの?」

赤玉はいつも奥様らしい態度を保っていたのに、今までこんなに取り乱したことはなかった。

なんだか...

様子がおかしい。

傍らの使用人は首を振って、「奥様のお仕事で何か問題が起きたのかもしれません」

絢は心配になり、母の後を追って書斎まで来ると、ドアをノックした。「お母さん、中にいる?」

「どうしたの?」赤玉の声が中から聞こえた。

絢はドアを開けて、「具合でも悪いの?」

「いいえ」赤玉はこめかみを押さえて、「ちょっと疲れただけよ」

絢は続けて言った:「小口おばあさんに来てもらう?」

「ええ」赤玉は椅子の背もたれに寄りかかって、「小口おばあさんは医術が優れているから、漢方薬でも処方してもらえるかもしれないわね」

「すぐに電話してきます」

「ええ」

ピン!

その時、WeChatで通知音が鳴った。

赤玉はすぐにWeChatを開いた。

助手からのメッセージだった。

ファイル一つだけ。

赤玉はファイルを受信した。

ファイルはすぐにダウンロードが完了した。

赤玉はすぐに開いた。

中には小林桂代の個人情報があった。

小林桂代。

女性。

38歳。