小林綾乃は言った。「古医師についてです。」
古医師の原書のほとんどは甲骨文字で書かれているため、渡辺麗希が読めないのは当然だった。
「古医師?」渡辺麗希はさらに不思議そうに尋ねた。「なぜそれを読むの?」
「資格のためよ。」小林綾乃は淡々と答えた。
彼女も最近になって気づいたのだ。
この世界は以前の世界とは違うということを。
彼女のような者はここでは無資格医療行為と呼ばれる。
だから。
医師免許、薬剤師資格、そして漢方医師資格を取得する準備をしているのだ。
「資格?」渡辺麗希は自分の耳を疑った。「綾乃、医学書を読んで資格を取るって言ったの?」
それはそう簡単に取れるものではないはずだ。
医学博士でさえ合格できない人が多いようだ。
「まずは挑戦してみます。」
渡辺麗希は頷いて続けた。「実は落ちても大丈夫よ、綾乃。だってまだ高校三年生なんだし。それに、あなたは既に多くの人より賢いわ。」