二人は夫婦のようで、手を取り合い、品定めするような目つきをしていた。
小林桂美は目が利く方で、この男女が並々ならぬ身なりをしていることを一目で見抜いた。
女性が持っているバッグだけでも数百万円はするはずだ!
それだけではない。
二人の気品も抜群で、小林桂美はスーパーを経営してこれまで、高級ブランド品と気品が釣り合う人を見たのは初めてだった。
突然の成金のように、高級ブランドを身にまとっていても、教養の無さでブランド品が様にならない人とは違う。
この二人はきっと青葉市の上流階級に違いない!
そう思うと、小林桂美はすぐに気を引き締めて、笑顔で「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」と声をかけた。
その時になって、小林桂美は二人の後ろにスーツを着た若い男性が二人ついていることに気付いた。
がっしりとした体格。
まるでテレビに出てくるお金持ちの奥様のボディーガードのよう。
そう考えると、小林桂美は目を細めた。
この若い二人は本当にボディーガードなのかもしれない!
今日は本当に貴人に出会えたようだ。
そのとき、前を歩いていた中年女性が小林桂代に向かって「タイの燕の巣はありますか?」と尋ねた。
やはり。
最初から高価な物を求めてきた。
しかし小林桂美のここは普通のスーパーに過ぎず、普段は調味料や日用品を売っているだけだ。
燕の巣のような高級滋養品があるはずもない。
小林桂美は続けて「申し訳ございません、燕の巣はございませんが、輸入の高級粉ミルクやその他の高級滋養品はございます」と答えた。
小林桂美のスーパーは住宅街にあるため、親戚回りの人もよく来る。
そのため、中級の栄養補助食品も用意している。
ただし、買い手がいなくて期限切れになることを恐れて、あまり多くは置いていない。
中年女性の言葉を聞いて、彼女は非常に後悔した。今日このような貴重なお客様が来られることが分かっていれば、卸売業者に高級品を届けてもらうべきだった。
それを聞いた中年女性は少し躊躇してから、隣の中年男性に「どうしましょう?」と尋ねた。
中年男性はタバコに火をつけて「じゃあ、店にある物を一通り買っておこう。とりあえず適当に買って、数日後に執事に母さんの分を届けてもらおう」と言った。
この言葉を聞いて、小林桂美の目が輝いた。
一体どんな家庭なんだろう!