085:こうして征服される~_4

志村文礼は軽く顔を上げると、すらりとした人影が目に入った。

少女は十七、八歳くらいで、お団子ヘアにして、唇は赤く歯は白く、シンプルな白いTシャツとジーンズを着ていたが、そのシンプルな装いでも驚くほどの美しさを放っていた。

どの角度から見ても欠点が一つもない。

志村文礼は目を細めて、さりげなく小林綾乃を見て、それから山下言野を見た。

なんてこった。

ボスの魅力は相変わらずだな、若い女の子が追いかけて店まで来るとは。

次の瞬間、山下言野はさりげなくパソコンの電源を切り、椅子から立ち上がった。「お嬢さん、何か用かな?」

小林綾乃は淡々とした口調で、手に持っていたタピオカミルクティーをテーブルに置いた。「これ、あなたに。」

山下言野は一瞬驚いた。

なぜ突然この子が彼にタピオカミルクティーを持ってきたのだろう?

前回の一言のせいか?

これは彼女が彼の言葉を心に留めていたということなのか?

山下言野はタピオカミルクティーを手に取り、薄い唇を少し上げて「タロイモ味が好きだって、どうして知ってたの?」

山下言野のこの様子を見て。

志村文礼は呆然とした。

なんだか、ボスの様子がおかしい気がする。

山下言野は風流な容姿をしているため、追っかけが多いが、この人はいつも直接断って情けをかけない。

でも今日は...

断るどころか、むしろ嬉しそうな様子だ。

これはどういうことだ?

「どんな味が好きか分からなかったから、お店の看板メニューを買ってきました」話しながら、小林綾乃は携帯を見た。元々あった赤い点は消えていて、まるで幻のようだった。彼女は顔を上げて山下言野を見た。「鉄屋さん、ここで見習いは募集してますか?」

見習い?

山下言野は眉を少し上げた。「誰が学びたいの?」

「私です。」小林綾乃は続けて言った。

山下言野は驚いた。

小林綾乃は真剣な表情で「実は自動車整備に興味があって、それに技術を一つ増やせば将来の選択肢も増えます。あなたみたいに、何か起きても少なくとも飢え死にはしないでしょう」

山下言野の店は自転車修理だけでなく、自動車修理もやっている。

ただ店が小さすぎて、普段自動車を修理しに来る人は少ない。

洗車に来る人さえも少ない。

言い終わると、小林綾乃は目を上げて山下言野を見た。「どうですか?受け入れてくれますか?」