小林桂美は小林強輝を見上げた。
彼女は突然、この弟が随分と見知らぬ人のように思えた。とても見知らぬ人のように。嘘をつく時でさえ眉一つ動かさない。しかも、騙しているのは実の姉なのに!
小林桂代が帝苑マンションで部屋を買えるなんて、豚が木に登るようなものだ。
さらに笑えるのは、小林強輝が小林桂代は彼らに多額の立て替えをしたと言うこと。小林桂代にそんなお金があるなら、なぜあの怪しい化粧品に投資させようとするの?
そう考えると、小林桂美は冷ややかに鼻を鳴らした。「強輝、お姉さんがそんなにお金持ちなら、どうして私に投資させようとするの?」
小林強輝は笑いながら言った。「姉さんの化粧品店は商売が上手くいってて、お金に困ってないんだ。投資してほしいわけじゃなくて、ただ一緒に儲けたいだけなんだよ。結局は家族なんだから!」
小林桂美は目を細めた。弟がこんな途方もない話をするとは思わなかった。
小林桂代がそんなに偉大なはずがない?
小林桂代が本当にお金を稼げるなら、きっととっくに親族なんて見向きもしなくなってるはず!まだ彼女と一緒にお金を分け合おうなんて?
絶対にありえない。
「もういい!」小林桂美は怒鳴った。「小林強輝、あなたが何を考えているか分かってるわよ!大川素濃と組んで私のお金を騙し取ろうとしてるんでしょう!私はあなたの実の姉よ、血のつながった実の姉なのに、私が小林桂代のような他人より下なの?」
他人?
小林桂代?
この瞬間、小林強輝は雷に打たれたように、顔面蒼白になった。
小林桂代は小林桂美にとって他人でしかなかったのだ。
だから...
全ては大川素濃の言った通りだった。小林桂美には心がない。彼女は最初から小林桂代を認めていなかった。投資しないのも、小林桂代に何の能力もないと思っていたからだ。
「二姉さん!何を言ってるんだ。姉さんは血のつながりはないかもしれないけど、彼女がいなければ今の私たちはないんだよ!彼女は自分を犠牲にして、私たちを大学まで行かせてくれたんだ!」
小林桂美は冷笑した。「それは当然でしょう。あの時、両親が拾ってこなかったら、彼女は死んでたのよ。」
小林桂美にとって、これらは全て小林桂代の当然の務めだった。
姉弟は感謝する必要など全くない。