大川素濃は頷いて、「このまま進めば、青葉市の長者になるのは間違いないわね」と言った。
青葉市の長者どころか。
和国一の長者になれると大川素濃は自信満々だった。
とにかく小林桂代の側について金を稼げばいいのだから。
小林桂美は呆れて、そんな途方もない話は聞いていられなかった。「おめでとうございます。素濃さん、この数日は古い家を売って引っ越しで忙しいでしょうね」と続けた。
「ええ」大川素濃は頷いて、「私も車を停めたら上がるわ」と言った。
小林桂美は城井沙織を連れて家の中へ入っていった。
階上に着くと、小林桂美は城井沙織に注意を促した。「沙織、あなたはお義母さんのような人間にはならないでね」
嘘ばかり!
まさに陽の当たらない下層民そのものだわ。
城井沙織は頷いた。
小林桂美は続けた。「それに、お姉さんと綾乃のような人間にもね。彼女たちは反面教師よ」
私の娘は上流階級の人間なのよ!
将来きっと輝かしい人生を送るわ。
城井沙織は目を細めて、「お義母さんがそんなことを言うなんて信じられません。おかしくなったんでしょうか?」と尋ねた。
「おかしくなんかなってないわ」小林桂美は冷ややかに言った。
「じゃあ、何なんですか?」城井沙織は好奇心に駆られて聞いた。
小林桂美はゆっくりと言葉を区切って言った。「妬みの病気にかかったのよ!」
私たちが花月マンションで家を買ったことを妬んでいるから、大川素濃は帝苑マンションで家を買ったなんて嘘をついているのよ。
帝苑マンションの家が紙で作られているとでも思っているの?
紙で作られていたとしても、彼女には買えないわ。
城井沙織は頷いて、母親の言葉にとても納得した様子だった。
その夜。
小林桂美は小林強輝と二人きりで話をした。
「強輝、最近仕事が忙しいの?」
小林強輝は頷いて、「ええ、忙しいよ。どうしたの、姉さん?」
小林桂美は眉をひそめて、「忙しくても、奥さんの面倒は見なきゃダメよ!このままじゃ、あなたたちの家庭は破綻するわよ!」
小林桂美の言葉を聞いて、小林強輝は首を傾げて、「素濃がどうかしたの?うちは上手くいってるよ」
上手くいってる?
やっぱり男は男ね!
大雑把すぎる。
大川素濃がもうすぐ家を潰すというのに、小林強輝はまだ何も気付いていない。