084:全額で家を買う、実力で圧倒_5

小林桂美は首を振って、「分からないわ。中に入って見てみましょう」と言った。

「はい」城井沙織は小林桂美の後に続いた。

中庭に入ってようやく大川素濃が買った新車が見えた。

小林桂美は口角を少し上げた。

ふん。

大川素濃が何か高級車でも買ったと思ったのに!

ただのボロいシトロエンじゃない。

たった190万円だけ。

さっきの大川素濃の得意げな声を聞いた人は、何か数千万円もする高級車でも買ったと思うでしょうね。

結局たいしたことないわね。

このボロ車、きっとローンで買ったんでしょう。

弟の家の経済状況なんてよく分かっているわ。

弟一人が稼いで家族全員が使う。

今住んでいる家もまだ数百万円のローンが残っているのに、大川素濃は小林桂代に10万円も投資して、今度は無駄に車を買って...

小林桂美は目に浮かぶ皮肉を押し殺し、大川素濃の側に行って笑顔で言った。「碧、車買ったの?」

「うん」

大川素濃の車が全額払いできるはずがないと分かっていても、小林桂美はわざと聞いた。「この車、全額払い?それともローン?」

「全額よ。この車そんなに高くないから」と大川素濃は笑って答えた。

全額?

190万円は高くないかもしれない!

でも大川素濃に払える余裕があるの?

見栄を張ることしかできない人じゃない。

本当に気持ち悪い。

まるで小林桂代と同じ。

何者でもないくせに、虚栄心だけは強い。

それを聞いて、小林桂美は作り笑いを浮かべた。「190万円の車を全額払いだなんて、碧はこの間お姉さんと商売して相当儲かったんでしょう?きっと住宅ローンも完済したんじゃない?」

「ちょっと儲かったわ」と言って、大川素濃は不思議そうに続けた。「お義姉さん、どうしてこの家のローンが完済したって知ってるの?強輝が話したの?」

彼女は小林桂美にそんな話をしたことは一度もなかった。

大川素濃の言葉を聞いて、小林桂美は笑いそうになった。

この大川素濃は本当に大口を叩くわね!

住宅ローンも完済して全額で車も買うなんて、宝くじでも当たったのかしら。

小林桂美は目を細めて、「お姉さんと商売してそんなに儲かったなら、どうして新しい家を買わないの?このボロい団地に住み続けるのもどうかと思うけど?」