山下おばあさんが去った直後のことでした。
秋山春樹と藤原巧が段ボール箱を持って売りに来ました。
三輪車の前まで来ると、小林綾乃の姿が目に入りました。
小林綾乃に一度こっぴどく叱られて以来、藤原巧は大人しくなり、少なくとも陰口は叩かなくなり、顔を合わせれば礼儀正しく接するようになりました。
小林綾乃が廃品回収車の前に立っているのを見て、藤原巧は目を疑いましたが、よく見ても光景は変わりませんでした。
本当に小林綾乃だったのです!
藤原巧は笑いながら言いました。「綾乃ちゃんが廃品回収をしているの?目の錯覚かと思ったわ!」
「錯覚じゃないわ」小林綾乃は淡々とした口調で答えました。「金田おばあさんの代わりに店番をしているだけよ。段ボールを売りに来たの?」
藤原巧は頷きながら、小林綾乃を品定めするような目で見ました。もう廃品回収までしているのに、大川素濃はまだ小林桂代と一緒に化粧品店を開いて儲かっているなんて嘘を言っているなんて。
「今、段ボールは1キロいくらなの?」藤原巧は続けて尋ねました。
「50銭よ」小林綾乃は答えました。
藤原巧は手に持っていた段ボールを小林綾乃に渡しながら、「重さを量ってもらえる?」と言いました。
小林綾乃は段ボールを受け取り、手際よく重さを量りました。
秋山春樹はそんな小林綾乃の様子を見ていて、驚きと共に不思議な気持ちになりました。
小林綾乃はどうして今日、自分たちが段ボールを売りに来ることを知っていたのだろう?
彼から見れば、小林綾乃は自分のために、もっと話がしたくて、自分に会いたくて、急遽段ボールを売ることにしたに違いないと思いました。
小林綾乃の行動はすべて彼のためだと。
結局のところ、彼は小林綾乃の憧れの人なのだから。
そうでなければ。
秋山春樹にはもっと良い理由が思い浮かびませんでした。
すぐに、小林綾乃は重さを量り終えて、「21キロです」と言いました。
21キロは女の子にとってはかなりの重さのはずなのに、小林綾乃の手の中では何も重さを感じないかのように軽々と扱っていました。
秋山春樹は気付かれないように眉をひそめました。
小林綾乃は彼の注目を集めようとしすぎているのではないだろうか?
女の子が21キロものものを持ち上げられるはずがない?