086：恥を晒し、引っ越しの準備_4

一橋景吾は続けて言った。「じゃあ、午後は僕一人？」

「志村文礼が来るかもしれない。」

志村文礼が来るかもしれないと聞いて、一橋景吾の心は少し落ち着いた。「そう、分かった。」

山下言野が出かけようとしていた。

そこへ小林綾乃がやってきた。

彼女は半袖Tシャツにデニムのショートパンツ、白いスニーカーを履いており、とても元気で活力に満ちていた。

小林綾乃を見た一橋景吾は目を輝かせた。「小林！どうしてここに？」

「見習いに来たの。」小林綾乃は淡々と答えた。

一橋景吾は目を丸くした。「えっ！本気なの？」

彼は小林綾乃が冗談で言っただけだと思っていた。

まさか本当に来るとは。

女の子が、なぜ自動車整備なんて。

「冗談に見える？」小林綾乃は眉を少し上げた。

一橋景吾はどう反応していいか分からなかった。

山下言野は黙って外していた手袋を再び着け、小林綾乃を見て、「じゃあ、午後はまずタイヤの修理から教えるよ。」

それを聞いて、一橋景吾は首を傾げた。

タイヤの修理？

もし間違っていなければ、山下言野はさっき午後は用事があって出かけると言ったはずだ。

こんなに早く用事が済んだ？

そう思い、一橋景吾は山下言野の方を向いた。「山下さん...」

山下言野は何も言わなかったが、一橋景吾は彼の目に「黙れ」という言葉をはっきりと読み取った。

一橋景吾はすぐに言い直した。「山下さん、私は仕事に戻ります。」

「ああ。」山下言野は軽く頷いた。

言い終わると、山下言野は小林綾乃に視線を向けた。「行こう。」

「はい。」小林綾乃は軽く頷いた。

一橋景吾は部屋からタイヤパッチを取り出して小林綾乃に渡した。「小林、頑張って。」

「うん。」小林綾乃は軽く頷いた。

彼女はタイヤパッチを持って外に出て、山下言野の指導の下、手際よく学んでいった。

志村文礼が修理工場に着いた時、目にしたのはこんな光景だった。

山下言野が優しい声で小林綾乃にタイヤ修理の細かい点を説明していた。

小林綾乃は真剣に聞いていた。

志村文礼は驚いた。

幻覚を見ているのかと思った。これが、あの高慢な山下言野さんだろうか？

志村文礼は眉をしかめ、急いで部屋の中に入り、一橋景吾に尋ねた。「これはどういう状況？」

一橋景吾は肩をすくめた。「見たままだよ。」