しかし小林綾乃は帰ろうとはしなかった。「大丈夫です。もう眠くないから」
小林綾乃の返事を聞いて、一橋景吾はため息をついた。「今日もまた行列だな!」
そう言って、一橋景吾は続けた。「小林、そのカバンの中に何が入ってるの?随分重そうだけど」
「本よ」小林綾乃は淡々と答えた。
ラブレターも本の一種よね?
今日彼女は山ほどのラブレターを受け取った。少なくとも数キロはあるだろう。そのまま捨てるのはもったいないし、古紙として売れば少しはお金になる。だから山下おばあさんに渡して古紙として売ってもらおうと思っていた。
おばあさんも大変だし。
小林綾乃は歩きながらあくびをした。今日は調子があまり良くなく、前も見ずに歩いていた。修理店の敷居を越えようとした時――
バン!
彼女は壁にぶつかってしまった。