その瞬間のことだった。
彼の顔は首元まで真っ赤になった。
それは彼の26年の人生で見たことのない光景だった。
小林綾乃は制服の上着を脱ぎ、中には白い丸首のTシャツを着ていた。
首元はそれほど大きくなかったが。
彼女が山下言野の前に立ち、少し身を屈めると、しゃがんでいる人には見えてしまう...
その起伏する曲線が。
山下言野の心臓は突然リズムを失った。
立ち上がり、なるべく冷静を保とうとして綾乃を見つめ、「お嬢さん」
「はい?」小林綾乃は少し振り返り、「どうしました?」
山下言野は薄い唇を開いて、「先に帰りなさい。今夜は用事があって、早めに閉店するかもしれないから」
「わかりました」小林綾乃は少し頷き、部屋に入って鞄を取り、「じゃあ、先に帰ります」
「ああ」意識的に抑えていたものの、山下言野の声にはまだかすれた調子が残っていた。