その瞬間のことだった。
彼の顔は首元まで真っ赤になった。
それは彼の26年の人生で見たことのない光景だった。
小林綾乃は制服の上着を脱ぎ、中には白い丸首のTシャツを着ていた。
首元はそれほど大きくなかったが。
彼女が山下言野の前に立ち、少し身を屈めると、しゃがんでいる人には見えてしまう...
その起伏する曲線が。
山下言野の心臓は突然リズムを失った。
立ち上がり、なるべく冷静を保とうとして綾乃を見つめ、「お嬢さん」
「はい?」小林綾乃は少し振り返り、「どうしました?」
山下言野は薄い唇を開いて、「先に帰りなさい。今夜は用事があって、早めに閉店するかもしれないから」
「わかりました」小林綾乃は少し頷き、部屋に入って鞄を取り、「じゃあ、先に帰ります」
「ああ」意識的に抑えていたものの、山下言野の声にはまだかすれた調子が残っていた。
一橋景吾は小林綾乃の後ろ姿を見つめ、困惑した表情を浮かべた。
しばらくして、一橋景吾は山下言野に向かって、「兄貴、今夜何かあるんですか?」
早めに閉店する用事があるなんて、聞いていなかったのに。
山下言野は一橋景吾の質問に直接答えず、こう言った:「従業員用の制服を何着か注文してきてくれ」
従業員用の制服?
どういうこと?
一橋景吾は呆然とした。
山下言野は再び口を開いた、「上着は純白のボタン付きシャツで、下はズボンでいい」
一橋景吾は訳が分からない様子で、「兄貴、なんで急に制服なんですか?」
私服でも良いじゃないですか?
「頼んだら行けよ」山下言野は一橋景吾を見つめ、声は数段冷たくなっていた。
たった一つの眼差しだけで、一橋景吾は背筋が凍るほど怖くなり、もう理由を聞く勇気もなくなって、「兄貴、じゃあまずMIKOUにデザイン案を出してもらって、気に入ったら注文しましょうか?」
「ああ」
言い終わると、山下言野は頭を下げて車の修理を続けた。
青葉高校の近くには数校の高校がある。
下校時間はそれぞれ異なっている。
今は第二高校の下校時間だった。
校門前は人々の声で騒がしかった。
小林綾乃は人の少ない道を選んで歩こうとしたが、それでも人混みは避けられなかった。
「わあ、あの女の子すごく可愛い!」
「どこの学校の子?」
「名前知りたい!!!」