「ふん」渡辺麗希は冷笑した。
松本楠敬は眉を少し上げ、「信じないのか?」
「信じるわけないでしょう!」
松本楠敬はテニスボールを持ち、目を細めて小林綾乃を見つめた。「綾乃、負けても泣かないでよ!」
小林綾乃は眉を少し上げ、「控えめにした方がいいわよ」
松本楠敬はふふっと笑った。
小林綾乃の傲慢さといったら。
今日こそ小林綾乃に人としての道を教えてやる。
小林綾乃に本当のテニスの達人とはどういうものか見せてやる。
松本楠敬はボールを小林綾乃に投げ、「サーブは君からどうぞ」
「いいわ」小林綾乃は軽く手を上げ、松本楠敬が投げたボールを直接キャッチした。
松本楠敬は一瞬固まった。
さっき投げたボールはかなりの勢いだったはずだ。
あれだけの衝撃があったのに、小林綾乃はどうしてあんなに簡単にキャッチできたんだ。
もし彼の目が間違っていなければ...
小林綾乃は眉一つ動かさなかったようだ。
偶然だろう?
そうでなければ、小林綾乃にそんな力があるはずがない。
松本楠敬が考え込んでいる隙に、小林綾乃はすでにサーブを打っていた。「松本楠敬、レシーブよ」
彼女の声は淡々としていながらも力強かった。
松本楠敬は素早く反応してボールを無事に返した。
小林綾乃のサーブは絶妙なコースで、力加減も程よく、女子らしい打ち方だった。
松本楠敬は手加減する気はなく、思い切り打ち返した!
松本楠敬が小林綾乃がボールを拾いに屈むと思った瞬間、小林綾乃は一撃で返球した。
松本楠敬は軽く笑った。
小林綾乃は実力は高くないが、見せかけだけは派手だな。
しかしその後の展開は松本楠敬を呆然とさせた。
なんと!
パン!
地面に落ちるはずだったボールが、松本楠敬の方へ飛んできた。
松本楠敬は目を見開き、一瞬固まった後、すぐにジャンプしてボールを取りに行った。
しかし残念ながら。
少し遅かった。
次の瞬間、ボールは地面に落ちた。
松本楠敬は眉をしかめながら、地面からボールを拾い上げ、心の中で呟いた:「まさか!」
小林綾乃のボールを返せなかったなんて。
最初は単なる不注意だと思っていた。
しかしその後。
小林綾乃のサーブに対して、松本楠敬はまったく太刀打ちできず、すべてノーリターンだった。
小林綾乃のプレースタイルは圧倒的だった。