097:賭け、優越感_7

小林桂代は首を振って、「私もよく分からないわ。綾乃の言う通りにしましょう」と言った。

どうせ移動手段に過ぎないのだから。

小林桂代は車に特別なこだわりはなかった。

大川素濃は頷いて、「うん、綾乃の言うことなら間違いないわ。さあ、乗って出発しましょうか?」

美人亭の商売は日に日に良くなり、小林桂代と大川素濃はすでに5号店と6号店を開く計画を立てていた。

5号店と6号店は、北定区から約30キロメートル離れた場所に選んだ。

店舗はほぼ決まっており、二人は今日、家主と契約の話し合いをするために行くところだった。

小林桂代は身を屈めて助手席に乗り込んだ。

すぐに車は前方の道路に消え、車の流れに溶け込んでいった。

金田コーチは横から歩み出て、習慣的に手を上げて顎に触れた。

小林桂代を迎えに来た人が運転していたのはシトロエンだった。

数百万円の車だ。

街中によくある車だ。

小林桂代はお金持ちだと聞いていたのに?

お金があるのにこんな車に乗るのか?

金田コーチは目を細めた。この車は彼のフォルクスワーゲンにも及ばない!

きっと何か勘違いしているに違いない。

1時間後。

その白いシトロエンは歩行者天国に停まった。

ここは青葉市と隣接する山陽県との境界付近だった。

郊外に属している。

田舎っぽい郊外だ。

歩行者天国を少し過ぎると、田んぼや広大な果樹園が見える。

田野で汗を流して働く農夫たちの姿も見える。

小林桂代は畦道に立ち、遠くを見つめ、その目には言い表せない感情が浮かんでいた。しばらくして、大川素濃の方を向いて、「碧、故郷が恋しい?」と尋ねた。

なぜだか分からないが、この光景を見て故郷を思い出した。

そうだ。

半年前、彼女も田んぼで働く一人だった。

大川素濃は頷いて、「恋しいわ」と答えた。

あっという間に青葉市に来て半年以上、もうすぐ1年になる。

そう思いながら、大川素濃は続けて言った:「うちの裏庭のみかんの木、今年は実がなったかしら」

もし実がなっていれば、今頃は熟しているはず。

小林桂代は笑って言った:「うちのみかんの木は毎年たくさん実をつけるから、今年もきっとなってるわ。碧、時間を見つけて、帰省しましょうか?」

「いいわね」大川素濃は頷いた。