小林綾乃は受け取らず、淡々とした口調で言った。「北谷おじいさん、私があなたを救ったのは医者としての責任からです」
「分かっている」北谷おじいさんは頷いて、「でもこれは私の真心なんだ。小林さんが受け取らないと、私の心がどうしても借りがあるような気がして」
ここまで言われて、小林綾乃は仕方なく受け取った。
これ以上断れば、他意があると誤解されかねない。
彼女が受け取るのを見て、北谷おじいさんはほっとした。「小林さん、開けて見てください」
言われて、小林綾乃は封筒を開けた。
中には。
公印が押された任命書があった。
漢方医学協会副会長。
それを見て。
小林綾乃は軽く眉を上げた。
この副会長の位置とは縁があるようだ。回り回って、また原点に戻ってきた。
しばらくして、彼女は北谷おじいさんを見て、穏やかな口調で言った。「北谷おじいさん、私を認めていただき、ありがとうございます。でも、今のところ漢方医学協会に入る予定はありません」