099:脅威_6

小林綾乃は受け取らず、淡々とした口調で言った。「北谷おじいさん、私があなたを救ったのは医者としての責任からです」

「分かっている」北谷おじいさんは頷いて、「でもこれは私の真心なんだ。小林さんが受け取らないと、私の心がどうしても借りがあるような気がして」

ここまで言われて、小林綾乃は仕方なく受け取った。

これ以上断れば、他意があると誤解されかねない。

彼女が受け取るのを見て、北谷おじいさんはほっとした。「小林さん、開けて見てください」

言われて、小林綾乃は封筒を開けた。

中には。

公印が押された任命書があった。

漢方医学協会副会長。

それを見て。

小林綾乃は軽く眉を上げた。

この副会長の位置とは縁があるようだ。回り回って、また原点に戻ってきた。

しばらくして、彼女は北谷おじいさんを見て、穏やかな口調で言った。「北谷おじいさん、私を認めていただき、ありがとうございます。でも、今のところ漢方医学協会に入る予定はありません」