市井の民とはいえ、そんな人の言葉を気にする必要があるのだろうか?
長井糸美はそのような人々に関心を持つことはなかった。
それを聞いて、白川希蝶は笑って言った。「糸美、その通りよ。貧しい山里からは悪い輩が出るものね」
ここよ!
西京とは比べものにならないわ。
長井糸美は少し目を向けて、「受験票は持ってる?」
「持ってるわ」白川希蝶はバッグから受験票を取り出した。
長井糸美は頷いて、「じゃあ、行きましょう」
白川希蝶はすぐに長井糸美の後を追った。
二人は受験者入口に着き、薬剤師に受験票を渡した。
受験票を確認する担当の薬剤師は、名前の欄を見た時、長井糸美を見る目つきが変わった。
長井姓。
十八歳。
そして、レトロな服装。
もしかして、漢方医学界で有名な永田徳本の子孫、長井家の末裔ではないだろうか?