101:秘密

市井の民とはいえ、そんな人の言葉を気にする必要があるのだろうか?

長井糸美はそのような人々に関心を持つことはなかった。

それを聞いて、白川希蝶は笑って言った。「糸美、その通りよ。貧しい山里からは悪い輩が出るものね」

ここよ!

西京とは比べものにならないわ。

長井糸美は少し目を向けて、「受験票は持ってる?」

「持ってるわ」白川希蝶はバッグから受験票を取り出した。

長井糸美は頷いて、「じゃあ、行きましょう」

白川希蝶はすぐに長井糸美の後を追った。

二人は受験者入口に着き、薬剤師に受験票を渡した。

受験票を確認する担当の薬剤師は、名前の欄を見た時、長井糸美を見る目つきが変わった。

長井姓。

十八歳。

そして、レトロな服装。

もしかして、漢方医学界で有名な永田徳本の子孫、長井家の末裔ではないだろうか?