庶民というのは本当に天地の高さも知らないものだ。
本当に三十分以内に出てしまったのだ。
試験会場の外。
太陽が燃えるように照りつけている。
小林綾乃は片手に携帯を持ち、もう片方の手で額を覆いながら、入口の方向へ急いで走っていった。
試験会場の入口には多くの待っている家族が立っていた。
小林綾乃が出てくるのを見て。
それぞれ異なる表情を浮かべた。
山下おばあさんはショート動画を見ていたが、顔を上げると小林綾乃がこちらに向かってくるのが見えた。すぐに携帯を閉じ、小林綾乃に手を振って、「綾乃ちゃん、こっちよ!」
小林綾乃は山下おばあさんの方向へ走っていった。
山下おばあさんは買ったばかりの水を小林綾乃に渡した。
冷やした水を一口飲むと、頭から足まで涼しさが広がった。
とても気持ちよかった。