大橋然斗は小林綾乃の斜め後ろに座っていた。
顔を上げるだけで。
授業中はいつも小林綾乃の横顔が見えた。
彼女の肌は白かった。
彼の角度からは、小さな毛穴まで見えるほどだった。
でも大谷仙依は違った。
大谷仙依は肌を白く見せるファンデーションを塗り、鮮やかな口紅をつけ、つけまつげはフォークより長いほど誇張的だった。
実は大谷仙依も昔はそうではなかった。
あの頃の大谷仙依は大橋然斗の目には完璧な存在だった。
しかしいつからか、大橋然斗はそんな大谷仙依よりも素顔の小林綾乃の方が良いと思うようになっていた。
そう思った大橋然斗は、我に返ろうと頭を強く叩いた。
なぜこんな時に小林綾乃のことを考えているんだ?
小林綾乃がどんなに綺麗でも、大谷仙依の万分の一にも及ばない。
大橋然斗が頭を叩くのを見て、大谷仙依はすぐに心配そうに尋ねた:「然斗兄さん、どうしたの?」