119:偶然の出会い_3

搭乗時間が迫っていたので、大川素濃は続けて言った。「お姉さん、私たちは先に行くわ。着いたら電話するね。」

「いいわよ。」小林桂代は軽く頷いた。

大川素濃と大川勝は身を翻して保安検査場の方向へ歩いていった。

姉弟の姿が見えなくなってから、小林桂代はようやくバッグを持って立ち去った。

ちょうど振り返ったとき。

一人の人影にぶつかられた。

小林桂代は全く心の準備がなく、そのままに地面に倒れてしまった。

ドン!

手に持っていたバッグも地面に落ち、中の書類や日焼け止めなどの女性用品が一面に散らばった。

「すみません、申し訳ありません!」小林桂代にぶつかった人は謝りながら彼女を助け起こした。「飛行機に間に合わせようと急いでいて気づきませんでした。大丈夫ですか?」

話し始めるとすぐに標準的な西京弁だとわかった。

小林桂代は無意識にこの声に聞き覚えがあるような気がして、笑顔で顔を上げた。「大丈夫です。」

見ると、彼女にぶつかった男性は三、四十歳くらいの様子で、物腰が柔らかく上品で、どこか古風な教師のような雰囲気があった。きちんとアイロンがけされたスーツを着こなし、手作りの革靴を履いており、手入れが行き届いているせいか、実際の年齢がわからないほどだった。

男性は申し訳なさそうな表情で地面に散らばったものを拾い集めた。小林桂代が大丈夫だと言っても、彼はなお言った。「病院で診てもらった方がいいですか?」

「いいえ、結構です。」小林桂代は男性から渡されたバッグを受け取った。「ちょっと転んだだけですから。飛行機に急いでいるなら、早く行かれたほうがいいですよ。」

男性は腕時計を見た。「まだ数分ありますが、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です。」小林桂代は首を振り、無意識に尋ねた。「失礼ですが、どちらの出身ですか?」

「西京の者です。」

西京の人?

この言葉を聞いて、小林桂代は少し眉をひそめた。男性の訛りに聞き覚えがあると思い、臨海町の近くの出身かと思っていた。

まさか男性が西京の人だとは。

不思議だ。

なぜ西京弁に親しみを感じるのだろう?

小林桂代は手を上げて髪をかき上げた。

気のせいかもしれない!