よりによって彼女にぶつかるなんて?
そう思いながら、村上暁由は続けた。「きっと彼女はここで何日も待ち伏せしていたんだわ」
お金持ちの家に嫁ぐためなら手段を選ばない女性もいる。
村上暁由は若いが、多くの人間と出来事を見てきた。
この数年、もし彼女が父親のために多くのダメな女性を遠ざけていなかったら、父親はとっくに女性にだまされて実の子供さえ分からなくなっていただろう。
村上承也は小林桂代を知らないし、彼女がどこの人かさえ知らなかったが、なぜか小林桂代に対して不思議な好感を抱いていた。その言葉を聞いて、無意識に小林桂代を弁護した。「さっきの女性はそういう人ではない」
もし小林桂代が本当に目的を持った女性なら、自分は大丈夫だとは言わないし、すぐに立ち去ったりもしないだろう。
彼女はこの機会に具合が悪いと言って、彼の連絡先を聞き出すはずだ。
しかし小林桂代は何もしなかった。
この言葉を聞いて、村上暁由はさらに呆れた。「お父さん、ほら、もう引っかかってるじゃない?」
あの女性がどんな手段を使ったのか分からないけど、村上承也がこんなに早く彼女に心を奪われるなんて!
村上承也にとって、これは初めてのことだった。
以前は。
女性たちの意図的な声かけに対して、村上承也は一瞥もしなかった。
でも今は...
彼はあの女性のために弁護し始めた。
呆れると同時に、村上暁由は少し好奇心も抱いた。
あの女性、ちょっとすごいかも!
もし彼女がその技を少しでも学べたら、今頃まだ片思いの段階にいることもなかっただろう。
村上承也も娘にどう説明すればいいか分からず、ただ言った。「暁由、君が想像しているようなことじゃないんだ...」
村上暁由は村上承也の言葉を遮った。「お父さん、お母さんが亡くなってから長い年月が経ちました。娘として、あなたの今の状況をよく理解しています。前から言っているように、私はお父さんが再婚することに反対していません。でも、変な女性を連れてきてはダメです」
ここで村上暁由は一旦言葉を切り、また続けた。「もしお父さんが外のそんな変な女性を家に連れてきたら、私が同意しても、おばあちゃんは絶対に同意しないわ」
村上承也は何も言わず、ただ腕時計を見た。「早く行こう、もうすぐ搭乗締め切りだ」
言い終わると、彼は搭乗口の方向に歩き始めた。