121:学校祭_2

彼は大谷仙依のピアノ演奏を聴くのがとても好きだった。

全身が一緒に静かに落ち着いていくような感覚だった。

10組。

クラス委員長が小林綾乃の席にやってきた。「小林美人~」

小林綾乃は性格が良く、容姿も美しく、成績も優秀で、物事に対して自分の意見を持ち、話し声も心地よく、今や10組全体のアイドル的存在だった。

小林綾乃はノートを写していて、声を聞くと少し顔を上げた。「何?」

彼女はいつも簡潔だった。クラス委員長もそれに慣れていて、笑いながら言った。「明日は学校の記念日で、各クラスが出し物をするんだ。高校3年生から順番に、私たちのクラスは10番目に舞台に上がる。今みんな階段教室でリハーサルしてるけど、ピアノの練習に行かない?」

「いいわ」小林綾乃は手を振った。「即興でやるから大丈夫」

今はみんながリハーサル中で、彼女が今行っても、おそらく列に並ばなければならないだろう。

彼女にはやるべきことがたくさんあった。

列に並ぶ時間なんてどこにある?

それに。

ただの学校行事に過ぎず、小林綾乃にとっては簡単なことだった。慌てる必要もなく、リハーサルに行く必要もなかった。

小林綾乃が行きたくないと言うので、クラス委員長も無理強いしなかった。「わかった、小林美人、明日頑張ってね」

「うん」小林綾乃は軽く頷いた。

言い終わると、クラス委員長は2枚の入場券を取り出した。「これは明日、保護者が学校に来るときに使う入場券だよ。大事に保管してね」

小林桂代は明日来る時間がなかったが、小林綾乃はそれでも入場券を受け取りポケットにしまった。「ありがとう」

夕方の放課後、小林綾乃はいつものように修理工場を手伝いに行った。

一橋景吾は彼女のカバンを受け取りながら、冷たいミルクティーを渡した。「三兄が買ったんだ」

それを聞いて、山下言野はさらりと言った。「たまたま買いすぎただけだ。捨てるのはもったいないからな」

言い終わって、山下言野は自分が少し変に思えた。

兄が妹にミルクティーを買うのは普通のことじゃないか?

なぜ彼は説明する必要があったのだろう?

幸い小林綾乃も深く考えず、ただ笑って言った。「ありがとう鉄屋、今度は私がおごるよ」

山下言野が何か言う前に、一橋景吾が文句を言った。「小林、適当な約束はやめてよ」