月初めに、杉本瑠璃が転校し、正式に紅葉学園で勉強する日が来た。
紅葉学園に入学後は寮生活が必要となり、杉本律人と田中美奈は娘との別れを惜しんだものの、紅葉学園で学べることは貴重な機会であり、二人もそれほど悲しまなかった。
どうせ娘はY市で学んでいるので、会いたい時は簡単に会える。
紅葉学園の規則では、登校は生徒自身で行かなければならず、保護者の付き添いは禁止されている。皆はこの規則をよく守っている。なぜなら、保護者が付き添った生徒は、第一次選考で既に落とされているからだ。
資格を取り消されたくなければ、学校の規則に従って登校しなければならない。
新しい環境は、杉本瑠璃にとって新たな始まりだった。
前世では高校一年生で学生生活が終わってしまったが、この人生では他の生徒と同じように過ごせる。その感覚は、とても良いものだった。
「蒼!」杉本瑠璃が振り返ると、呼んだのは斎藤きくこだった。彼女の服は古く、何年も着ているのが一目で分かり、少し体に合っていなかった。
杉本瑠璃は斎藤きくこに微笑みかけ、手を振った。「きくちゃん、あなたも早いのね」「うん、今日は入学初日だから、遅刻するのが怖くて」
斎藤きくこは最初少し緊張していたが、杉本瑠璃を見てからは、そんなに緊張しなくなった。
「行きましょう、中に入ってから話そう」
斎藤きくこは頷き、すぐに杉本瑠璃の後を追って、二人は学校の門をくぐった。
斎藤きくこは中に入ってから、周りを見回し、少し困惑した様子で尋ねた。「蒼、私たちはどこで報告すればいいの?通知書にも書いてなかったわ。ただ今日学校に来るようにとしか」
その通り、紅葉学園の通知書には、登校日が書かれているだけで、他には何も書かれていなかった。どのクラスに行くのか、何をすべきなのかも書かれていなかった。
このことに斎藤きくこは戸惑っていた。斎藤きくこだけでなく、杉本瑠璃も紅葉学園が何をしようとしているのか分からなかった。
しかし杉本瑠璃は、これも紅葉学園の特徴なのだろうと推測した。おそらく全ての生徒が一度は経験することなのだろう。そう考えると、そこまで不思議には思えなくなった。
「分からないわ。とりあえず、他の生徒がどこに向かっているか見て、その後をついていきましょう」