第88章 不気味な歓迎式

桐生誠一は不気味な目で斎藤きくこを見つめ、警戒するように言った。「まさか、あいつのことが好きになったんじゃないだろうな?」

斎藤きくこは一瞬驚き、桐生誠一を睨みつけた。「何を考えているの?私はそんな女の子を引き寄せるタイプの男の子なんて好きじゃないわ」

彼女はただ杉本瑠璃と桐生誠一が安藤颯を知っているから、少し詳しく聞いただけなのに、桐生誠一に安藤颯のことが好きだと誤解されてしまった。

なんという論理だろう。遠くから一目見ただけで人を好きになれるなんて、彼女を馬鹿にしているのか?

桐生誠一は斎藤きくこのことをよく知らなかったが、杉本瑠璃は知っていた。斎藤きくこにはずっと彼氏がいなかった。杉本瑠璃が以前聞いたとき、斎藤きくこは「男がやれることは私にもできる。男なんて何の役に立つの?」と答えた。

おそらく父親への嫌悪感から、斎藤きくこはずっと彼氏を作らなかったのだ。桐生誠一は急に申し訳なくなり、後頭部を掻きながらニヤニヤと言った。「へへ、ごめんごめん、言い過ぎた、言い過ぎた。きくちゃん、怒らないでね」

斎藤きくこはそんな些細なことで怒るような狭量な人間ではなかったので、ただ尋ねた。「あの人、あなたたちとよく知り合いなの?」

実は彼女は杉本瑠璃と桐生誠一の輪に入りたかったのだ。やっと友達ができたので、二人のことを大切にしたかった。

桐生誠一は以前のことを全て斎藤きくこに話した。斎藤きくこはそれを聞いた後、再び安藤颯を見たとき、軽蔑の眼差しを向けた。

「人は見かけによらないって本当だわ。見た目は人間らしいのに、まさかあの安藤颯がヒモ男だったなんて」

桐生誠一はそれを聞いて、すぐに同意し、にこにこしながら斎藤きくこの肩を抱いた。「英雄、所見略同だね!私たちが友達になれたのも納得だよ。考え方まで同じなんだから」

斎藤きくこは一瞬顔を赤らめたが、すぐに落ち着きを取り戻し、桐生誠一の腕を払いのけた。

「この隙に私を触ろうなんて考えないでよ」

杉本瑠璃と桐生誠一と一緒にいるとき、斎藤きくこは少しずつ本性を見せ始めた。

桐生誠一は大げさに斎藤きくこを見回してから言った。「まさか、別人になったんじゃないよね?」

今の斎藤きくこは、いじめられっ子には見えなかった。あの日、斎藤つきこにいじめられていた人が目の前の斎藤きくこだったとは信じがたかった。