「桐生誠一」
「はい!」
斎藤きくこは桐生誠一に向かって頑張れのジェスチャーをし、杉本瑠璃も桐生誠一に微笑みながら頷いた。桐生誠一は決意に満ちた眼差しで杉本瑠璃と斎藤きくこにウインクを返すと、すぐに壇上に上がり、山本主任の振り分けを待った。
山本主任は名簿に目を通し、桐生誠一を見つめた。
「今回の面接で、稀有な弁論の才能を持つ者がいると聞いていた。法学部の主任までもが君を褒めていたそうだ。確かに人材だ!」
山本主任の笑顔には何か不気味なものがあり、杉本瑠璃は眉をひそめた。何かがおかしいと感じていた。
桐生誠一は落ち着いていて、謙遜もせずに「山本主任、私はどの学部に配属されますか?」と尋ねた。
山本主任の言葉には触れず、ただ自分の学部を聞いただけだった。
山本主任は一瞬躊躇してから「桐生誠一、法学部だ」と答えた。