第93章 強気な杉本瑠璃

北澤亮太の教科書が投げ出されたのは、彼が反応できなかったからだが、杉本瑠璃の教科書は、高橋智樹が掴んだ時には、すでに杉本瑠璃が片手で押さえていた。

一見軽やかな動きで、力が入っているようには見えなかったが、普段から力の強い高橋智樹でさえ、教科書を動かすことができなかった。

杉本瑠璃の教科書は、彼女に押さえられたまま微動だにせず、高橋智樹が掴んで皺になってさえも、杉本瑠璃の手から振り払うことはできなかった。

これには高橋智樹も驚き、杉本瑠璃を見る目つきに探るような色が加わった。

自分がどれだけの力を使ったか、彼自身よく分かっていた。教科書を押さえ込む力は、彼の力の数倍なければ、このようなことは不可能なはずだった。

彼が少し苦しそうになっているのに、杉本瑠璃は表情一つ変えず、まったく苦しそうな様子を見せなかった。

もともとの席の争いは、瞬く間に力比べに変わっていた。

全員が息を殺して、杉本瑠璃が負けるのを待っていたが、なかなか結果が出ないことに、みな心の中で驚いていた。

高橋智樹の腕前は、みんなよく知っていた。テコンドー黒帯八段、柔道黒帯五段、さらに剣術も非常に優れており、伝統武術もいくつか身につけていた。

1組の全員から見て、高橋智樹は武力の化身だった。そんな中、一見か弱そうな杉本瑠璃が、高橋智樹に真っ向から挑戦するなんて、本当に度胸がある。

最も重要なのは、杉本瑠璃が今まで負けていないということだった。

二人とも徐々に力を増していき、この状態が数分続いた後、杉本瑠璃は高橋智樹を見て、軽く笑って言った。「このクラスメイト、教科書を持ってないの?先生に余分なものがないか聞いてみたら?私の教科書は人に貸す気はないわ。」

そう言うと、杉本瑠璃は教科書を押さえるのをやめ、もう片方の手で高橋智樹の脈を掴み、軽く押さえると、高橋智樹の手から力が抜けた。

杉本瑠璃は何事もなかったかのように教科書を取り上げたが、指はまだ高橋智樹の脈に触れたままで、高橋智樹は完全に呆然としていた。

この杉本瑠璃は、指を少し動かしただけで彼の力を抜いてしまった。確かに手ごわい新入生だ。

さっき外で聞いた話では、今年女子の新入生で、高台で経済学部に来ると宣言した者がいるということだったが、まさか入ってすぐに出会うことになるとは。