第92章 3人の男子

「新入り、そこはお前の席じゃないぞ。ルールも知らないのか!」

北澤亮太が座ろうとする前に、誰かが声を上げた。その口調から、善意のものではないことは明らかだった。

北澤亮太は体を硬くしたまま、数秒間その場で立ち止まり、最後に眼鏡を押し上げて、背筋を伸ばし、別の席へと向かった。

しかし、また座ろうとした瞬間、すぐに別の声が上がった。「メガネ君、そこの席も座れる場所じゃないぞ。」

北澤亮太は話者を見上げた。その人物は無表情で、まるで事実を述べているだけのようだった。

数秒の沈黙の後、北澤亮太は再び背筋を伸ばし、「では、空いている席はどこですか?」と尋ねた。

1組の生徒たちは北澤亮太を見つめ、一斉に「全部埋まってる」と答えた。

ふん、杉本瑠璃は皆を見渡した。面白いことになってきたな。どうやら1組の生徒たちは、彼らに席を与えるつもりはないようだ。

北澤亮太もようやく理解した。こんな大きな階段教室で、席がないはずがない。明らかに威圧を加えようとしているのだ。

北澤亮太がまだ次の行動を決めかねているとき、杉本瑠璃も教室に入ってきた。最前列に歩み寄り、空いている席を適当に見つけると、そのまま座ってしまった。他の生徒たちが止める暇もなかった。

すると、杉本瑠璃のこの行動に、皆の表情が変わった。

「新入り、その席は本当に...」

言葉は途中で途切れた。隣の人物に遮られ、目配せをされたのだ。その人物はそれを見て、すぐに理解し、それ以上何も言わなかった。

1組の生徒たちは、意味深な目で杉本瑠璃を見つめていた。まるで何か面白い出来事を期待しているかのように。

北澤亮太も適当な席を見つけて座った。今度は誰も止めなかった。全員の注目が杉本瑠璃に集中していたからだ。

その時、北澤亮太は杉本瑠璃に感謝すべきか、同情すべきか分からなかった。

彼は男なのに、全てのプレッシャーを杉本瑠璃に押し付け、その後ろに隠れるなんて...少し...格好悪い。

あれこれ考えた末、座っていた北澤亮太は立ち上がり、杉本瑠璃の隣の空席に移動して座った。

今度は、皆の表情がさらに興味深いものになった。

杉本瑠璃は横を向いて北澤亮太を見た。北澤亮太は明らかに居心地が悪そうだったが、それでも小声で「北澤亮太です」と言った。