杉本瑠璃が山本宝飾を吸収したからなのか、それとも山本主任の面子を潰して、大勢の前でこの件を暴露したからなのか分からなかった。
あるいは、杉本瑠璃は自慢したがりで、少し頭が足りないから、山本主任の面子を潰したのかもしれない。
あるいは、杉本瑠璃は実力があり、山本主任の報復を恐れないほど強いのかもしれない。
どちらにせよ、杉本瑠璃は今日大いに目立ってしまった。残念ながら、このような時に目立つ者ほど、これからの日々が辛くなるものだ。
山本竜也はその場に立ち尽くし、顔が青ざめていた。彼は、杉本瑠璃がこれほど大勢の前でこの件を暴露するとは思っていなかった。
どうやら、彼は杉本瑠璃を見くびっていたようだ。杉本瑠璃は彼と山本颯真の関係を既に知っていたからこそ、わざと暴露して彼の面子を潰したのだろう。
本来なら、クラス分けの件で少し私情を挟んだつもりだったが、杉本瑠璃にそう言われてしまうと、まるで公私混同しているかのように見えてしまう。
この理不尽な仕打ちに、山本竜也は憤懣やるかたなかった。もしここでさらに食い下がれば、公私混同という汚名を確実に着せられることになる。
杉本瑠璃を懲らしめたい気持ちはあっても、山本竜也はこのタイミングで手を出すほど愚かではない。時間はたっぷりある、チャンスはまだまだある。
「よろしい。経済学部に入りたいというのなら、そうしよう。杉本瑠璃、経済学部だ。」
山本主任は杉本瑠璃を見ることなく、素早く彼女のクラス分けを告げた。杉本瑠璃はそれを聞くと、ただ軽く笑って、余計な言葉を発することなく、高台から降りた。
今日の紅葉学園のこの一件の意図が分かったような気がした。少し目立ってしまったが、杉本瑠璃は怖くなかった。
彼女が紅葉学園に来たのは自己を高め、成長するためだ。自分の学びたいことすら選べないのなら、なぜ紅葉学園に来る必要があるのだろうか?
桐生誠一と斎藤きくこは杉本瑠璃を慰めるべき言葉が見つからず、二人は彼女に親指を立てて敬意を表すしかなかった。
杉本瑠璃は肩をすくめ、自分も仕方がないという態度を示した。
その後、学生たちが一人ずつ上がっていき、順調にクラス分けが進んだ。安藤颯は芸術学部の演劇専攻に配属された。この配属について、杉本瑠璃は生まれながらの役者である安藤颯にぴったりだと感じた。